神世より今日のためとや八束穂に
長田の稲のしなひ初めけん
- 歌の意味
-
神代の昔から今日のためであったのだろうか、長田の稲は、長く豊かな穂にしなやかにたわみ始めたのだろう。
- 鑑賞
-
巻第七 賀歌 754
詞書「寿永元年大嘗会主基方稲舂歌丹波国長田村をよめる」
大嘗会の歌の一連の八首目である。神代から今日のためであったのか、長田の稲は八束穂にしなやかにたわみ始めたのだろうと詠む。詞書によれば、寿永元年の大嘗会で主基の国となった丹波国の長田村を、稲舂歌として詠んだ歌である。
作者は藤原資長の子で、権中納言に至った。
場面は寿永元年の大嘗会、場所は丹波国の長田村の稲田である。
直接の契機は、寿永元年(1182)、安徳天皇の大嘗会で主基の国に定められた丹波国の地名を、稲舂歌として詠んだことである。
初句「神世より」は、神々の時代から、の意である。本巻の第七百三十六首の三句「神代より」と同じ語で、そこでは国土を固め置いたことを詠んだが、ここでは稲の実りを神代からの用意として詠む。
二句「今日のためとや」の「や」は疑問の係助詞で、結句の「けん」で結ぶ。本巻の第七百三十六首の「君がためとや」と同じ形で、大嘗会の今日を神代から定められた日とする。
三句「八束穂に」は、長い穂に、の意である。「八束」は一握りの幅を八つ重ねた長さで、豊かに実った穂をいう。
四句「長田の稲の」は、丹波国の長田村の稲の、の意である。地名の「長田」に長い田の意も響き、八束穂の豊かさと重なる。
結句「しなひ初めけん」は、しなやかにたわみ始めたのだろう、の意で、過去推量の「けん」の連体形で結ぶ係り結びである。穂の重みでたわむ稲を、神代から今日の大嘗会のために実り始めたものと見て、主基の国の実りを神の時にまで結び付ける。
いねつきうた:大嘗会で神に供える稲を舂くときにうたう歌
やつかほ:長く豊かに実った稲の穂
しなふ:しなやかにたわむ
- 作者
-
藤原兼光
- 出典
-
新古今和歌集
- その他の歌
-