飽かざりし花をや春も恋ひつらん
ありし昔を思ひ出でつつ
- 歌の意味
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見飽きることのなかった花を、春もまた恋しく思ったのであろうか。過ぎ去った昔を思い出しながら。
- 鑑賞
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巻第八 哀傷歌 761
詞書「返し」
春の死別を詠む一連の三首目で、前歌への返しである。見飽きることのなかった花を、春もまた昔を思い出しながら恋しく思ったのであろうかと詠む。詞書は返しで、前歌の実方の贈歌に答えたものである。
作者は太政大臣藤原為光の子で、左近中将となったが、正暦五年(994)に若くして没した。中古三十六歌仙の一人である。
場面は前歌と同じ正暦二年(991)の諒闇の春、場所は都である。
直接の契機は、前歌の実方朝臣からの贈歌への返しである。
初句「飽かざりし」は、見飽きることのなかった、の意である。「し」は過去の助動詞で、過ぎ去った日の花を振り返る言い方である。
二句「花をや春も」の「花」は、前歌の「花盛り」を受ける。「や」は疑問の係助詞で、三句の「らん」で結ばれる。「春も」と言い、人だけでなく春という季節までもが花を恋うのかと問う。
三句「恋ひつらん」は、恋しく思ったのであろうか、の意である。「つ」は完了、「らん」は推量で、二句の「や」を受けて結び、ここで三句切れとなる。
四句「ありし昔を」は、過ぎ去った以前の日々を、の意である。前歌の「憂き世」の今と対照をなす。
結句「思ひ出でつつ」は、思い出しながら、の意である。倒置によって、春が昔を思い出しつつ花を咲かせたと読める構成になっている。前歌が時節を忘れて花を折ったことを詠んだのに対し、返しは、花を恋い昔をしのぶのは春も同じだとして、贈り手の心を受けとめている。
あく:満ち足りる、飽きる
- 作者
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藤原道信
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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