あやめ草誰しのべとか植ゑ置きて
蓬がもとの露と消えけん
- 歌の意味
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菖蒲を、誰にしのべというつもりで植えておいて、あの子は蓬の根元の露のように消えてしまったのであろうか。
- 鑑賞
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巻第八 哀傷歌 769
詞書「幼き子の失せにけるが、植ゑ置きたりける菖蒲を見て詠み侍りける」
夏の景物に故人をしのぶ一連の二首目である。誰にしのべというつもりで菖蒲を植えておいて、幼い子は蓬の根元の露のように消えてしまったのかと詠む。詞書によれば、亡くなった幼い子が植えておいた菖蒲を見て詠んだ歌である。
作者は平安時代後期、鳥羽院の皇后であった高陽院藤原泰子に仕えた女房である。
場面は菖蒲の育つ夏、場所は子が菖蒲を植えた庭である。
直接の契機は、亡くなった幼い子が植えておいた菖蒲を見たことである。
菖蒲は五月五日の端午の節句に軒に葺くなどして邪気を払う草である。
初句「あやめ草」は菖蒲である。端午の節句に用いられる草を、子が植えたものとして初句に置く。
二句「誰しのべとか」は、誰にしのべというつもりで、の意である。「とか」の「か」は疑問の係助詞で、結句の「けん」で結ばれる。
三句「植ゑ置きて」は、植えておいて、の意である。前歌の第七百六十八首の詞書にも「植ゑ置きて」とあり、故人が植えた草花を形見として詠む点で二首が並ぶ。
四句「蓬がもとの」の「蓬がもと」は、蓬の生い茂る根元で、荒れた地を思わせる。
結句「露と消えけん」は、露のように消えてしまったのであろう、の意である。「けん」は過去推量で、二句の「か」を受けて連体形で結ぶ。幼い子のはかない死を露にたとえ、残された菖蒲の生命と対照させる。巻頭歌の第七百五十七首の露と同じく、ここでも露が命のはかなさを表す。次歌の第七百七十首も、端午の菖蒲に寄せて昔を恋う。
うす:亡くなる
うゑおく:植えておく
あやめぐさ:菖蒲
しのぶ:亡き人を慕い思い出す
- 作者
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高陽院木綿四手
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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