思ひきやはかなく置きし袖の上の
露を形見にかけんものとは
- 歌の意味
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思っただろうか、思いもしなかった。はかなく置いた袖の上の露を、亡き人の形見として掛けることになろうとは。
- 鑑賞
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巻第八 哀傷歌 776
詞書「御返し」
秋の景物に故人をしのぶ一連の二首目で、前歌への返しである。はかなく置いた袖の上の露を、形見として掛けることになるとは思いもしなかったと応える。詞書は御返しで、前歌の和泉式部の贈歌に上東門院が答えたものである。
作者は藤原道長の娘で、一条天皇の中宮となり、後一条天皇、後朱雀天皇の母となった。のち院号を受けて上東門院と呼ばれた。
場面は前歌と同じ小式部内侍の没後、場所は記されていない。
直接の契機は、和泉式部から形見の唐衣とともに奉られた前歌への返しである。
初句「思ひきや」の「き」は過去、「や」は反語で、思っただろうか、いや思いもしなかった、の意である。ここで初句切れとなり、倒置によって結句の「ものとは」へと続く。
二句「はかなく置きし」は、前歌の「置くと見し」と「はかなくて」を受ける。唐衣に織られた露を、はかなく置いた露と言いなす。
三句「袖の上の」は、小式部内侍が着ていた唐衣の袖の上の、の意である。
四句「露を形見に」は、前歌の「露」を受け、消えずに残った露を亡き人の形見と見る。
結句「かけんものとは」の「かけ」は、衣を身に掛ける意である。「ん」は推量で、形見として掛けることになろうとは、の意となり、初句の「思ひきや」へ返る。前歌が、露は残ったのに人は何にもたとえようがないと詠んだのに対し、残った露こそを形見とすると受けとめる。次歌の第七百七十七首も「はかなく消えし草の上の露を形見と」と、ほとんど同じ句の運びで露を形見と詠み、二首が並べられている。
かく:衣を身にまとう
かたみ:故人をしのぶよすがとなるもの
- 作者
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藤原彰子
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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