秋風の露の宿りに君をおきて
塵を出でぬることぞ悲しき
- 歌の意味
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秋風に消えやすい露のような、はかない仮の宿りであるこの世にあなたを残し置いて、塵の世を出てしまうことが悲しい。
- 鑑賞
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巻第八 哀傷歌 779
詞書「例ならぬこと重くなりて、御髪下ろしたまひける日、上東門院、中宮と申しける時遣はしける」
秋の景物に故人をしのぶ一連の五首目である。秋風に消えやすい露のような世にあなたを残して、塵の世を出てゆくのが悲しいと詠む。詞書によれば、病が重くなって出家した日に、当時中宮であった上東門院に贈った歌である。
作者は円融天皇の皇子で、母は藤原詮子である。藤原定子、藤原彰子を后とし、その宮廷には清少納言や紫式部らが仕えた。「上東門院」は藤原彰子で、このときは中宮であった。
場面は作者が病により出家した日、場所は記されていない。
直接の契機は、病が重くなって出家した日に、中宮彰子へ歌を贈ったことである。
作者は寛弘八年(1011)六月に出家し、その数日後に崩御した。この歌は藤原行成の日記『権記』にも、上の句を「露の身の風の宿りに」とする形で伝わる。
初句「秋風の」は、秋風に吹かれる、の意で、二句の「露」にかかる。『権記』に伝わる形では「露の身の」とあり、本集では秋風を詠む句として秋の景物の一連に置かれている。
二句「露の宿りに」は、秋風に消えやすい露のように、はかない仮の住まいであるこの世をいう。前歌の第七百七十八首の「露をかけつつ」を受け、露が人の世のたとえへと移る。
三句「君をおきて」の「おき」は、あなたを後に残し置く意と、露が置く意を掛ける掛詞で、二句の「露」の縁語でもある。
四句「塵を出でぬる」の「塵」は、けがれた俗世のことである。「出で」は俗世を離れる出家をいい、「ぬる」は完了である。病の重いなかでの出家であり、この世との別れの思いがこもる。
結句「ことぞ悲しき」の「ぞ」は強意の係助詞で、「悲しき」と連体形で結ぶ。去ってゆく者の側から、残す人を思って悲しむ歌であり、前歌までの残された者が亡き人をしのぶ歌とは立場が反転している。本巻の第七百五十七首の「後れ先立つ」でいえば、先立つ者の歌である。
みぐしおろす:髪を下ろして出家する
やどり:仮の住まい
おく:あなたを後に残し置く意と、露が置く意を掛ける
ちり:けがれた俗世
- 作者
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一条天皇
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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