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亡き人の形見の雲やしぐるらん
夕べの雨に色は見えねど

歌の意味
亡き人の形見である雲が、時雨を降らせているのであろうか。夕べの雨の中に、その色は見えないけれど。
鑑賞
巻第八 哀傷歌 803

詞書「雨中無常といふことを」
 冬の景物に故人をしのぶ一連の四首目である。夕べの雨に色は見えないが、亡き人の形見の雲が時雨を降らせているのであろうかと詠む。詞書によれば、「雨中無常」の題で詠んだ歌である。
 作者は高倉天皇の皇子で、譲位後に院政を行い、『新古今和歌集』の撰進を命じた。
 場面は時雨の降る夕べ、場所は記されていない。
 直接の契機は、「雨中無常」(雨の中に無常を思う)の題による詠である。
 なお原文の三句には「しほるらん」の「ほ」を「く」とする注記がある。ここでは注記に従って「しぐるらん」と読んだ。

 初句「亡き人の」は、亡くなった人の、の意で、二句の「形見の雲」にかかる。
 二句「形見の雲や」の「形見の雲」は、亡き人を火葬した煙が空に昇って雲となったものをいう。「や」は疑問の係助詞で、三句の「らん」で結ばれる。
 三句「しぐるらん」の「しぐる」は、時雨が降る意である。「らん」は現在推量で、二句の「や」を受け、時雨を降らせているのであろうか、と結ぶ。ここで三句切れとなる。
 四句「夕べの雨に」は、題の「雨中」を受け、夕暮れに降る雨をいう。
 結句「色は見えねど」の「ね」は打消の「ず」の已然形、「ど」は逆接で、色は見えないけれど、の意である。雨に紛れて雲の色は見えないが、その雨を形見の雲から降るものと思いやる。前々歌と前歌の第八百二首の夕煙を受けて、煙から雲、雲から時雨へと景が移り、次歌の第八百四首の時雨へと続く。

しぐる:時雨が降る
作者
後鳥羽院
出典
新古今和歌集
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