尋ねても跡はかくても水茎の
行方も知らぬ昔なりけり
- 歌の意味
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尋ね求めても、筆の跡はこうして書き残されていても、流れる水のように行方も知れない昔であることだ。
- 鑑賞
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巻第八 哀傷歌 806
詞書「斎宮女御のもとにて、先帝の書かせたまへりける草子を見侍りて」
筆跡を形見としてしのぶ一連の二首目で、贈答の贈歌である。尋ねても、筆の跡はこうして書き残されていても、行方も知れない昔であると詠む。詞書によれば、斎宮女御のもとで、先帝がお書きになった草子を見て詠んだ歌である。
作者は平安時代中期の女房歌人で、斎宮女御徽子女王などに仕えた。中古三十六歌仙の一人である。「斎宮女御」は徽子女王で、村上天皇の女御である。「先帝」は村上天皇である。
場面は村上天皇の没後、場所は斎宮女御の御所である。
直接の契機は、斎宮女御のもとで、村上天皇の筆になる草子を見たことである。
初句「尋ねても」は、尋ね求めても、の意である。過ぎ去った昔を探し求める心を示す。
二句「跡はかくても」の「跡」は筆跡である。「かく」は、このように、の意の「斯く」と、文字を「書く」の意を掛ける掛詞である。筆の跡はこうして書き残されていても、の意となる。
三句「水茎の」の「水茎」は、筆、また筆跡をいう。「水」の縁で、四句の「行方」を導く。
四句「行方も知らぬ」は、流れ去った水のように行方も分からない、の意である。「行方」は水茎の「水」の縁語である。
結句「昔なりけり」の「けり」は詠嘆で、そういう昔なのだったと気づく心を示す。筆跡は目の前に残っていても、書いた人と過ぎた日々はたどれないという。前歌の第八百五首の扇の筆跡に続いて、ここでは帝の筆跡を詠む。次歌の第八百七首は、この「水茎」を受けて返す。
さうし:紙を綴じた書物
かく:このようにの意の斯くと、文字を書く意を掛ける
みづくき:筆、また筆跡
- 作者
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馬内侍
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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