ほしもあへぬ衣の闇にくらされて
月ともいはずまどひぬるかな
- 歌の意味
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涙で乾かす間もない喪服の闇に心を暗くされて、明るい月夜とも言わずに、道に迷ってしまったことだ。
- 鑑賞
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巻第八 哀傷歌 808
詞書「恒徳公隠れてのち、女のもとに、月明かき夜、忍びてまかりて詠み侍りける」
近しい人を失った嘆きを詠む一連の一首目である。涙で乾かす間もない喪服の闇に暗くされて、月夜とも言わずに迷ってしまったと詠む。詞書によれば、父の恒徳公が亡くなった後、月の明るい夜に、ひそかに女のもとへ出かけて詠んだ歌である。
作者は太政大臣藤原為光の子で、左近中将となったが、正暦五年(994)に若くして没した。中古三十六歌仙の一人である。「恒徳公」は作者の父の藤原為光で、右大臣藤原師輔の子であり、太政大臣に至った。正暦三年(992)に亡くなった。
場面は父為光の没後の月の明るい夜、場所は女の家へ向かう道である。
直接の契機は、父の喪中に、月の明るい夜にひそかに女のもとへ出かけたことである。
初句「ほしもあへぬ」は、干すこともできない、の意である。「あへぬ」は、…しきれない、の意で、涙に濡れた袖を乾かす間もないことをいう。
二句「衣の闇に」の「衣」は喪服である。父を失った悲しみに暗く閉ざされた心を、喪服の色の暗さに重ねて「闇」という。
三句「くらされて」は、暗くされて、の意である。「れ」は受身で、悲しみの闇に心を暗くされることをいう。
四句「月ともいはず」は、明るい月夜であるとも言わずに、の意である。詞書の「月明かき夜」と二句の「闇」が対をなす。
結句「まどひぬるかな」の「まどふ」は、道に迷う、心が乱れる意である。「ぬる」は完了、「かな」は詠嘆である。月は明るいのに、喪の闇に暗くされて迷ってしまったという。前歌の第八百七首までの筆跡を形見とする歌から、ここでは父を失った嘆きへと移り、次歌の第八百九首も父を失った嘆きを詠む。
かくる:貴人が亡くなる
まかる:出向く
ほす:濡れたものを乾かす
くらす:暗くする
まどふ:道に迷う、心が乱れる
- 作者
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藤原道信
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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