恋ひわぶと聞きにだに聞け鐘の音に
うち忘らるる時の間ぞなき
- 歌の意味
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恋い慕ってつらく思っていると、せめて聞くだけでも聞いておくれ。この鐘の音に託して言うが、ふと忘れられる時の間さえないのだ。
- 鑑賞
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巻第八 哀傷歌 816
詞書「小式部内侍身まかりてのち、常に持ちて侍りける手箱を誦経にせさすとて詠み侍りける」
遺品や住まいの跡に故人をしのぶ一連の一首目である。恋い慕って嘆いていると、せめて鐘の音に聞くだけでも聞いておくれ、忘れられる時の間もないと詠む。詞書によれば、娘の小式部内侍が亡くなった後、小式部内侍がいつも持っていた手箱を誦経の布施として寺に納めるときに詠んだ歌である。
作者は大江雅致の娘で、和泉守橘道貞の妻となり、のち上東門院に仕えた。「小式部内侍」は作者と橘道貞の娘で、母とともに上東門院に仕えたが、万寿二年(1025)に若くして亡くなった。
場面は小式部内侍の没後、場所は誦経の行われる寺である。
直接の契機は、娘の遺品の手箱を誦経の布施としたことである。
誦経は、僧に経を読ませて死者の冥福を祈ることで、その布施として品物を納めた。
初句「恋ひわぶと」の「恋ひわぶ」は、恋い慕ってつらく思う意である。亡き娘を思う嘆きをいう。
二句「聞きにだに聞け」の「だに」は、せめて…だけでも、の意で、「聞け」は亡き娘への命令である。同じ語を重ねて、せめて聞くだけでも聞いておくれと強く呼びかける。ここで二句切れとなる。
三句「鐘の音に」は、誦経の鐘の音に、の意である。六音の字余りで、手箱を布施として行われる誦経の鐘に、亡き娘への思いを託す。
四句「うち忘らるる」の「うち」は接頭語で、ふと、の意を添える。「るる」は可能で、ふと忘れることができる、の意となる。
結句「時の間ぞなき」の「ぞ」は強意の係助詞で、「なき」と連体形で結ぶ。わずかの間も娘を忘れられないという。形見の手箱を仏事に手放してもなお忘れられない嘆きが示される。次歌の第八百十七首からは、故人の書き残した文をしのぶ歌が続く。
みまかる:亡くなる
てばこ:身の回りの小物を入れる箱
ずきやう:僧に経を読ませて冥福を祈ること
こひわぶ:恋い慕ってつらく思う
- 作者
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和泉式部
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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