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問へかしな片敷く藤の衣手に
涙のかかる秋の寝覚めを

歌の意味
見舞っておくれよ。ひとり寝の床に片袖を敷く喪服の袖に、涙のかかる、この秋の寝覚めを。
鑑賞
巻第八 哀傷歌 846

詞書「妻亡くなりて又の年の秋ころ、周防内侍がもとへ遣はしける」
 身近な人の死を嘆く一連の三首目である。見舞っておくれ、ひとり寝の喪服の袖に涙のかかる秋の寝覚めをと詠む。詞書によれば、妻が亡くなった翌年の秋ごろ、周防内侍のもとへ贈った歌である。
 作者は藤原経平の子で、権中納言に至り、白河天皇の命により『後拾遺和歌集』を撰進した。「周防内侍」は平仲子で、後冷泉天皇から堀河天皇までの四代に内侍として仕えた女房歌人である。
 場面は妻が亡くなった翌年の秋の寝覚め、場所は記されていない。
 直接の契機は、妻を亡くした翌年の秋に、周防内侍へ歌を贈ったことである。

 初句「問へかしな」の「問ふ」は見舞う意である。「かし」は念を押す終助詞、「な」は詠嘆で、見舞っておくれよ、の意となる。ここで初句切れとなる。
 二句「片敷く藤の」の「片敷く」は、自分の衣の片袖だけを敷いてひとりで寝る意である。「藤」は藤衣、すなわち喪服をいう。
 三句「衣手に」の「衣手」は袖である。
 四句「涙のかかる」は、涙がかかる、の意で、結句の「寝覚め」にかかる。
 結句「秋の寝覚めを」の「を」は、初句の「問へ」の目的を示す。倒置により、見舞ってほしい自分の姿が結句に置かれる。妻を亡くしてひとり寝となった秋の夜の寂しさを訴える。本巻の第七百九十首、第七百九十一首も秋の寝覚めに死別を思う贈答であり、同じ「秋の寝覚め」を詠む。前歌の第八百四十五首の友を失った嘆きに続き、ここでは妻を失った嘆きを詠む。

かたしく:自分の衣の片袖を敷いてひとりで寝る
ふぢごろも:喪中に着る喪服
ころもで:袖
作者
藤原通俊
出典
新古今和歌集
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