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君なくてよる方もなき青柳の
いとど憂き世ぞ思ひ乱るる

歌の意味
君がいなくなって、青柳の糸のように身を寄せる所もない。いっそうつらいこの世に、思いは乱れることだ。
鑑賞
巻第八 哀傷歌 847

詞書「堀河院隠れ給ひてのち詠める」
 身近な人の死を嘆く一連の四首目である。君がいなくて寄る方もない青柳の糸のように、いっそう憂き世に思い乱れると詠む。詞書によれば、堀河天皇が亡くなった後に詠んだ歌である。
 作者は右大臣源顕房の子で、権中納言に至り、堀河天皇の歌壇で活躍した。姉の賢子が堀河天皇の母であり、作者は堀河天皇の叔父にあたる。「堀河院」は堀河天皇で、嘉承二年(1107)に崩御した。
 場面は堀河天皇崩御の後、場所は記されていない。
 直接の契機は、堀河天皇の崩御である。

 初句「君なくて」の「君」は、亡き堀河天皇を指す。
 二句「よる方もなき」の「よる」は、身を「寄る」意と、糸を「縒る」意を掛ける掛詞である。頼りとして寄りかかる所もない、の意に、三句の青柳の糸の縁で縒る意が重なる。
 三句「青柳の」は、芽吹いた柳で、その細い枝を糸に見立て、四句の「いと」を導く。
 四句「いとど憂き世ぞ」の「いとど」は、いっそう、の意で、青柳の「糸」の音を含む。「ぞ」は強意の係助詞で、結句の「乱るる」と連体形で結ぶ。
 結句「思ひ乱るる」の「乱る」は、心が乱れる意に、柳の糸が風に乱れるさまが重なり、青柳の縁語となる。帝を失って頼りを失い、糸が乱れるように思いが乱れるという。「よる」「青柳」「いと」「乱るる」と糸にかかわる語を連ねる。本巻の第七百九十七首も堀河天皇を悼む歌であり、秋風に寄せた悲しみに対して、ここでは春の青柳に寄せる。

かくる:貴人が亡くなる
よる:身を寄せる意と、糸を縒る意を掛ける
あをやぎ:芽吹いて青々とした柳
作者
源国信
出典
新古今和歌集
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