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久方のあめにしをるる君ゆゑに
月日も知らで恋ひわたるらん

歌の意味
天に昇られ、降る雨に濡れしおれる君のために、月日の過ぎるのも知らずに、恋い慕い続けるのであろうか。
鑑賞
巻第八 哀傷歌 849

詞書「奈良の帝を納め奉りけるを見て」
 古い時代の歌人による哀傷歌の一連の一首目である。雨に濡れる帝のために、月日も知らずに恋い続けるのであろうかと詠む。詞書によれば、奈良の帝を葬り申し上げるのを見て詠んだ歌である。
 作者は飛鳥時代の歌人で、『万葉集』を代表する歌人の一人であり、後に歌聖と仰がれた。「奈良の帝」は奈良に都のあった時代の帝をいう呼び名であるが、誰を指すかについて定説を見ない。
 場面は帝の葬送、場所は記されていない。
 直接の契機は、帝の葬送を見たことである。

 初句「久方の」は、「天」「雨」「月」などにかかる枕詞である。
 二句「あめにしをるる」の「あめ」は、帝が昇った「天」の意と、葬送の日に降る「雨」の意を掛ける掛詞である。「しをる」は、濡れてぐったりする意である。
 三句「君ゆゑに」の「ゆゑに」は、…のために、の意である。「君」は亡き帝を指す。
 四句「月日も知らで」の「月日」は、「久方の」「天」の縁で天にかかわる月と日を詠み、同時に過ぎてゆく歳月をいう。「で」は打消の接続で、月日の過ぎるのも知らずに、の意である。
 結句「恋ひわたるらん」の「わたる」は、ずっと…し続ける意である。「らん」は現在推量で、恋い慕い続けるのであろうか、の意となる。前歌の第八百四十八首までの平安時代の歌人の歌から、ここでは古い時代の歌人の歌へと移り、以後、小野小町、在原業平、醍醐天皇らの歌が続く。

をさむ:遺骸を葬る
あめ:天の意と、雨の意を掛ける
しをる:濡れてぐったりする
こひわたる:恋い慕い続ける
作者
柿本人麻呂
出典
新古今和歌集
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