亡き人をしのびかねては忘れ草
多かる宿に宿りをぞする
- 歌の意味
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亡き人をしのぶ悲しみに耐えかねて、憂いを忘れるという忘れ草のたくさん生えているこの家に、宿りをしていることだ。
- 鑑賞
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巻第八 哀傷歌 853
詞書「思ひにて人の家に宿れりけるを、その家に忘れ草の多く侍りければ、主に遣はしける」
古い時代の歌人による哀傷歌の一連の五首目である。亡き人をしのびかねて、忘れ草の多い家に宿っていると詠む。詞書によれば、喪に服している間に人の家に泊まっていたが、その家に忘れ草が多く生えていたので、家の主に贈った歌である。
作者は平安時代前期の歌人で、中納言に至り、賀茂川の堤に邸があったことから堤中納言と呼ばれた。紫式部の曽祖父にあたる。三十六歌仙の一人である。
場面は喪中、場所は人の家である。
直接の契機は、喪中に泊まった家に忘れ草が多く生えていたことである。
忘れ草は萱草のことで、身につけると憂いを忘れるとされた。
初句「亡き人を」は、亡くなった人を、の意である。
二句「しのびかねては」の「しのぶ」は、慕い思い出す意で、「かね」は、…しかねる、の意である。しのぶ悲しみに耐えかねて、の意となる。
三句「忘れ草」は、憂いを忘れさせるという草で、四句の「多かる宿」へと続ける。
四句「多かる宿に」は、忘れ草のたくさん生えている家に、の意である。
結句「宿りをぞする」の「ぞ」は強意の係助詞で、「する」と連体形で結ぶ。「宿」と「宿り」の語を重ねる。悲しみを忘れたくて忘れ草の多い家に宿っているのだと、主の家の庭に寄せて詠む。前歌の第八百五十二首が喪服姿を詠んだのに続き、ここでは喪に服す身の悲しみを忘れ草に託す。本巻の第七百五十七首以来、形見によって故人をしのぶ歌が多いのに対し、ここでは忘れようとする心が詠まれる。
おもひ:喪に服すること
わすれぐさ:萱草、身につけると憂いを忘れるとされた草
- 作者
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藤原兼輔
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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