墨染めの袖は空にも貸さなくに
しぼりもあへず露ぞこぼるる
- 歌の意味
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墨染めの喪服の袖は、七夕の空の星に貸したわけでもないのに、絞りきれないほど露がこぼれ落ちることだ。
- 鑑賞
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巻第八 哀傷歌 855
詞書「母の女御隠れ侍りて、七月七日詠み侍りける」
平安時代中期の歌人による哀傷歌で巻を結ぶ一連の一首目である。墨染めの袖は空に貸したわけでもないのに、絞りきれないほど露がこぼれると詠む。詞書によれば、母の女御が亡くなった後、七月七日に詠んだ歌である。
作者は村上天皇の皇子で、中務卿を務め、後中書王と呼ばれた。詩歌に優れた。「母の女御」は村上天皇の女御の荘子女王である。
場面は母の没後の七月七日、場所は記されていない。
直接の契機は、母を亡くした後に七夕の日を迎えたことである。
七月七日の七夕は、牽牛と織女の二星が年に一度会う夜とされ、この日に二星へ衣を貸す、すなわち衣を供える習わしがあった。
初句「墨染めの」の「墨染め」は、墨色に染めた喪服である。
二句「袖は空にも」の「空」は、七夕の二星のいる天をいう。七夕に衣を供える習わしを踏まえる。
三句「貸さなくに」の「なくに」は、…ないのに、の意である。星に衣を貸したわけでもないのに、の意となる。二星に貸した衣は逢瀬の露に濡れるものとされるのに対し、自分の喪服は貸してもいないのに濡れるという。
四句「しぼりもあへず」の「あへず」は、…しきれない、の意である。袖を絞っても絞りきれない、の意である。
結句「露ぞこぼるる」の「露」は涙をたとえる。「ぞ」は強意の係助詞で、「こぼるる」と連体形で結ぶ。七夕の華やかな節日にも、喪服の袖は母を悼む涙にあふれるという。本巻の第七百七十七首も七月七日に亡き中宮をしのぶ歌であり、七夕の節日に故人を思う点で響き合う。前歌の第八百五十四首までの古い時代の歌人の歌に続き、巻の終わりに向かって平安時代中期の歌人の歌が置かれる。
かくる:貴人が亡くなる
すみぞめ:墨色に染めた喪服
しぼる:濡れたものを絞る
- 作者
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具平親王
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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