玉鉾の道の山風寒からば
形見がてらに着なむとぞ思ふ
- 歌の意味
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旅の道に吹く山風が寒いならば、あなたは形見を兼ねてこの装束を着てくれるだろうと思う。
- 鑑賞
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巻第九 離別歌 857
詞書「陸奥国に下り侍りける人に装束贈るとてよみ侍りける」
離別歌の巻頭歌であり、遠国へ下る人を送る一連の一首目である。道中の山風が寒ければ、贈った装束を形見を兼ねて着てくれるだろうと詠む。詞書によれば、陸奥国へ下る人に装束を贈る際に詠まれた。
作者は平安時代前期の歌人で、『古今和歌集』の撰者の一人であり、『土佐日記』を著した。
場面は陸奥国へ下る人の出立のとき、場所は都である。
直接の契機は、陸奥国へ下る人に装束を贈ったことである。
初句「玉鉾の」は「道」にかかる枕詞である。旅の道のりを思わせる語が、離別歌の巻の最初に置かれている。
二句「道の山風」は、旅の道中に吹く山からの風である。陸奥国へ向かう長い道のりの寒さを思いやっている。
三句「寒からば」は、寒いならば、の意で、仮定の条件を示す。まだ見ぬ道中の寒さを案じる作者の心が表れている。
四句「形見がてらに」は、形見を兼ねて、の意である。「がてら」は二つのことを兼ねる意を表し、贈る装束が寒さを防ぐ衣であると同時に、贈り主をしのぶ形見でもあることを示す。
結句「着なむとぞ思ふ」は、きっと着てくれるだろうと思う、の意で、係助詞「ぞ」を受けて連体形「思ふ」で結ぶ。別れの悲しみを直接いわず、贈り物に心を込める形で巻を開いており、本巻の第八百六十首や第八百六十三首など衣を贈る別れの歌の先がけとなっている。巻末の第八百九十五首も旅の狩衣を形見として贈る歌であり、巻頭と巻末が衣と形見で呼応している。
たまほこ:道にかかる枕詞
かたみ:別れた人をしのぶよすがとなる物
さうぞく:衣服、身に着ける衣装一式
- 作者
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紀貫之
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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