北へ行く雁の翼にことづてよ
雲の上書きかき絶えずして
- 歌の意味
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北へ飛んで行く雁の翼に便りを託してほしい。雲の上を行く雁に託す手紙の上書きを、絶やすことなく。
- 鑑賞
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巻第九 離別歌 859
詞書「浅からず契りける人の行き別れ侍りけるに」
遠国へ下る人を送る一連の三首目である。北へ飛ぶ雁の翼に託して、絶えることなく便りをよこしてほしいと願う。詞書によれば、深く親しい約束を交わした人と別れる際に詠まれた。
作者は藤原為時の娘で、一条天皇の中宮彰子に仕え、『源氏物語』を著した。
場面は親しい人が遠方へ去る別れのとき、場所は記されていない。
直接の契機は、深く契りを交わした人との別れである。
雁に手紙を託すのは、前漢の蘇武が匈奴に捕らわれた際、雁の足に手紙を結んで漢に消息を伝えたという故事にもとづく。
初句「北へ行く」は、北の空へ遠ざかる雁の姿を示す。別れて行く人の遠さが、雁の行方に重ねられている。
二句「雁の翼に」は、便りを運ぶ使いとしての雁である。雁が手紙を運ぶという故事を踏まえている。
三句「ことづてよ」は、託してくれ、の意の命令形で、ここで句切れとなる。三句切れによって、便りを求める願いがまず強く打ち出される。
四句「雲の上書き」は、雲の上を行く雁に託す手紙の上書きの意である。空を行く雁と地上の手紙とが一語の中で結び付けられている。
結句「かき絶えずして」の「かき」は、四句の「上書き」の「書き」と同じ音を重ねたもので、「かき絶ゆ」は便りがすっかり途絶える意となる。上書きの「書き」から「かき絶え」へと音を連ね、途切れない便りを願う形で一首を結んでいる。前歌がいつまた逢えるかを問うたのに対し、本歌は逢えないあいだの便りを求めている。
ことづつ:人に頼んで伝える、便りを託す
うはがき:手紙の表に書く宛名など
かきたゆ:すっかり絶える、音信が途絶える
- 作者
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紫式部
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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