秋霧のたつ旅衣おきて見よ
露ばかりなる形見なりとも
- 歌の意味
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秋霧の立つころに裁った旅衣を、手もとに置いて見てほしい。露ほどのささやかな形見であっても。
- 鑑賞
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巻第九 離別歌 860
詞書「田舎へまかりける人に旅衣遣はすとて」
遠国へ下る人を送る一連の四首目である。秋霧の立つころに旅衣を贈り、露ほどのささやかな形見であっても手もとに置いて見てほしいと詠む。詞書によれば、地方へ下る人に旅衣を贈る際に詠まれた。
作者は伊勢神宮の祭主を務め、梨壺の五人の一人として『後撰和歌集』の撰進に加わった。
場面は秋霧の立つ季節の出立のとき、場所は都である。
直接の契機は、地方へ下る人に旅衣を贈ったことである。
初句「秋霧の」は、秋霧が立つ意から次の「たつ」を導く。旅立ちの季節が霧の立つ秋であったことも示している。
二句「たつ旅衣」の「たつ」は、霧が立つ意と、衣を裁つ意、旅に発つ意を掛ける。一語に季節と衣と旅立ちが収められている。
三句「おきて見よ」は、形見として手もとに置いて見てくれ、の意で、命令形によってここで句切れとなる。「おき」は露が置く意を持って次の「露」の縁語となり、「を着て」の響きも含まれる。
四句「露ばかりなる」は、露ほどのわずかな、の意で、贈り物をへりくだっていう。露は別れの涙を思わせる語でもある。
結句「形見なりとも」は、形見であっても、の意で、逆接の仮定を表す。三句で言い切ったあとに添えた倒置で、贈る衣のささやかさを最後に示している。本巻の第八百五十七首も形見を兼ねた衣を贈る歌であり、雁の便りを詠む前歌を挟んで、衣と形見の主題が繰り返されている。
まかる:都から地方へ下る
たつ:霧が立つ意と、衣を裁つ意、旅に発つ意を掛ける
おく:手もとに置く意に、露が置く意を響かせ、「を着て」の意も含む
かたみ:別れた人をしのぶよすがとなる物
- 作者
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大中臣能宣
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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