着馴らせと思ひしものを旅衣
たつ日を知らずなりにけるかな
- 歌の意味
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着慣れてほしいと思って旅衣を裁ったのに、あなたが旅立つ日を知らないままになってしまったことだ。
- 鑑賞
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巻第九 離別歌 863
詞書「寂昭上人入唐し侍りけるに装束贈りけるに立ちけるを知らで追ひて遣はしける」
寂昭の入唐に際しての贈答の一首目である。着慣れてほしいと思って旅衣を用意したのに、旅立つ日を知らずに見送りそびれてしまったと嘆く。詞書によれば、寂昭が入唐する際に装束を贈ろうとしたが、すでに出立していたことを知らず、後を追って届けさせた歌である。
作者の名は伝わらない。
場面は寂昭が中国へ渡るため都を発った直後、場所は都である。
直接の契機は、寂昭の出立を知らないまま装束を贈ったことである。
寂昭は長保五年(1003)に宋へ渡った。詞書の「入唐」は、中国へ渡ることを慣用として唐と呼んだものである。次歌は寂昭の返歌である。
初句「着馴らせと」は、着慣れさせよ、すなわち長く着て身になじませてほしい、の意である。贈った衣を旅のあいだ身に着けてほしいという願いを示す。
二句「思ひしものを」は、思っていたのに、の意で、接続助詞「ものを」が逆接と詠嘆を兼ねる。
三句「旅衣」は、贈った装束を旅の衣として示す。次の「たつ」と結び付き、衣と旅の両方を担う語である。
四句「たつ日を知らず」の「たつ」は、衣を裁つ意と旅に発つ意を掛け、「旅衣」の縁語となる。衣を仕立てているあいだに相手が発ってしまったというすれ違いが一語に込められている。
結句「なりにけるかな」は、なってしまったことだ、の意で、詠嘆の「けるかな」で結ぶ。見送りに間に合わなかった心残りが表れている。次歌で寂昭は「たつこと知らぬ」とこの語を受けて返しており、前歌の兼輔歌が再会を頼みとしたのに続いて、見送ることさえかなわなかった別れが置かれている。
きならす:長く着て身になじませる
たつ:衣を裁つ意と、旅に発つ意を掛ける
にふたう:中国へ渡ること
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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