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これやさは雲のはたてに織ると聞く
たつこと知らぬ天の羽衣

歌の意味
これがそれなのか。雲の果てで織ると聞く、裁つことを知らない天の羽衣というものは。
鑑賞
巻第九 離別歌 864

詞書「返し」
 寂昭の入唐に際しての贈答の二首目である。届いた装束を、雲の果てで織られ裁つことを知らない天の羽衣に見立て、旅立つ日を知らなかったという前歌の嘆きに応える。詞書によれば、前歌への返歌である。
 作者は俗名を大江定基といい、三河守を務めたのちに出家し、宋へ渡って彼の地で没した。
 場面は寂昭が入唐のため都を発った直後、場所は旅の途上である。
 直接の契機は、前歌とともに装束が届けられたことである。

 初句「これやさは」は、これがそれなのか、の意で、係助詞「や」が疑問を表し、届いた装束を指して問いかける。
 二句「雲のはたてに」は、雲の果てに、の意で、天上の遠いところを示す。
 三句「織ると聞く」は、織ると伝え聞く、の意である。天上で織られるという天の羽衣の言い伝えを踏まえている。
 四句「たつこと知らぬ」は、前歌の「たつ日を知らず」を受ける。前歌が衣を裁つ意と旅に発つ意を掛けて見送れなかった嘆きをいったのに対し、天の羽衣は裁ち縫いすることのない衣であるとして、裁つことを知らない衣を受け取ったと切り返している。
 結句「天の羽衣」は体言止めで、天人の着る衣を指す。初句の「や」の疑問を受け、贈られた装束をこの世ならぬ衣になぞらえて贈り主への感謝を示す。前歌と「たつ」の掛詞を共有し、贈答が一対をなしている。

はたて:果て、極まるところ
あまのはごろも:天人が着て空を飛ぶという衣
たつ:衣を裁つ意と、旅に発つ意を掛ける
作者
寂昭
出典
新古今和歌集
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