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行く末にあふくま川のなかりせば
いかにかせまし今日の別れを

歌の意味
行く先に、逢うという名を持つ阿武隈川がなかったならば、今日の別れをどうしたらよいだろうか。
鑑賞
巻第九 離別歌 866

詞書「陸奥国の介にてまかりける時範永朝臣のもとに遣はしける」
 陸奥国にかかわる別れを詠む一連の二首目であり、藤原範永との贈答の一首目である。赴任先に逢うという名を持つ阿武隈川があるからこそ、今日の別れに耐えられると詠む。詞書によれば、陸奥国の介として下る際に範永に贈った歌である。
 作者は平安時代中期の官人で、陸奥介を務めた。
 場面は陸奥国へ赴任する出立のとき、場所は都である。
 直接の契機は、陸奥介として下るにあたり範永と別れたことである。
 阿武隈川は陸奥国の歌枕で、現在の福島県から宮城県を流れて太平洋に注ぐ川であり、「逢ふ」を掛けて再会を願う歌に詠まれた。次歌は範永の返歌である。

 初句「行く末に」は、これから行く先に、の意で、赴任先の陸奥国と、これから先の時という二つの方向を示す。
 二句「あふくま川の」は、陸奥国の阿武隈川に「逢ふ」を掛ける。赴任先の地名に再会の望みを見いだしている。
 三句「なかりせば」は、なかったならば、の意で、四句の「まし」と呼応して反実仮想をなす。本巻の第八百六十二首の三句と同じ語であり、逢うという名を持つ地に再会を託す発想も共通する。
 四句「いかにかせまし」は、どうしたらよいだろうか、の意で、係助詞「か」による疑問を「まし」の連体形で結ぶ。ここで句切れとなり、目的語となる結句が倒置によって後に置かれる。
 結句「今日の別れを」は、四句の目的語を倒置で最後に置いたもので、別れの今日という時点を強く印象づける。

あふくまがは:陸奥国の阿武隈川に、逢ふの意を掛ける
すけ:国司の次官
ゆくすゑ:行く先、これから先
作者
高階経重
出典
新古今和歌集
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