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とどまらむことは心にかなへども
いかにかせまし秋の誘ふを

歌の意味
都にとどまることは私の心にかなうけれども、どうしたらよいだろうか、秋が旅へと誘うのを。
鑑賞
巻第九 離別歌 875

詞書「返し」
 秋の別れを詠む一連の二首目であり、藤原隆家との贈答の二首目である。都にとどまることこそ心にかなうが、秋が旅へと誘うのをどうしようもないと返す。詞書によれば、前歌への返歌である。
 作者は藤原定時の子で、叔父の藤原済時の養子となり、左近衛中将から陸奥守となって任地で没した。
 場面は秋の出立の前、場所は都である。
 直接の契機は、前歌に対する返歌である。

 初句「とどまらむ」は、とどまろう、の意で、助動詞「む」が意志を表す。都にとどまりたいという本心から歌を起こす。
 二句「ことは心に」は、そのことは自分の心に、の意である。
 三句「かなへども」は、かなっているけれども、の意で、逆接によって心と身の成り行きのくい違いを示す。
 四句「いかにかせまし」は、どうしたらよいだろうか、の意で、係助詞「か」による疑問を「まし」の連体形で結び、四句切れとなる。本巻の第八百六十六首の四句と同じ句であり、いずれも赴任の別れのやむをえなさを表している。
 結句「秋の誘ふを」は、倒置によって四句の目的語を最後に置く。前歌の「秋の夕暮」を受け、秋を人のように旅へ誘うものとして、公の赴任による別れを秋のせいにして応じている。前歌が送る側の悲しみを秋に託したのに対し、本歌は行く側のやむをえなさを秋に託しており、同じ秋が贈答の両側で用いられている。

かなふ:思いどおりになる、一致する
さそふ:誘い出す、連れ出す
作者
藤原実方
出典
新古今和歌集
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