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思ひ出でば同じ空とは月を見よ
ほどは雲居にめぐりあふまで

歌の意味
思い出したならば、同じ空にあるものとして月を見よ。距離は雲のかなたほど遠く隔たっていても、月がめぐるように再びめぐり逢うときまで。
鑑賞
巻第九 離別歌 877

詞書「親王の宮と申しける時大宰大弐実政学士にて侍りける甲斐守にて下り侍りけるに餞賜はすとて」
 遠国の国司との別れを詠む一連の一首目である。思い出したならば同じ空にある月を見よ、再びめぐり逢うときまで、と甲斐国へ下る学士に贈る。詞書によれば、後三条院がまだ東宮であったころ、東宮学士であった実政が甲斐守として下る際に餞別を与えて詠んだ歌である。
 作者は後朱雀天皇の皇子で、藤原氏を外戚としない天皇として即位し、延久の荘園整理令を出した。
 場面は実政が甲斐国へ赴任する出立のとき、場所は都である。
 直接の契機は、東宮学士の実政が甲斐守として下る際に餞別を与えたことである。
 詞書の「大宰大弐実政」は藤原実政で、のちに大宰大弐となったことからこの呼称で記される。学士は東宮に学問を講じる東宮学士のことである。

 初句「思ひ出でば」は、思い出したならば、の意で、未然形に接続助詞「ば」が付いて仮定を表す。離れた後に都や東宮を思い出す時を想定している。
 二句「同じ空とは」は、同じ空にあるものとは、の意である。遠く離れても空は一つであるという思いを示す。
 三句「月を見よ」は命令形で、ここで三句切れとなる。月を二人をつなぐ仲立ちとして示している。
 四句「ほどは雲居に」は、距離は雲のかなたほど遠くとも、の意である。「雲居」は雲のあるはるかな所で、「月」の縁語でもある。
 結句「めぐりあふまで」は、月が空をめぐる意と、人が再び出会う意とを重ねる。前歌が淀の川霧に都から隔てられる旅人の歌であったのに対し、本歌は隔てられても月を同じ空に見よと送る側から呼びかけており、隔てと共有とが対をなしている。

くもゐ:雲のあるはるかな所
めぐりあふ:月が空をめぐる意と、人が再び出会う意を重ねる
がくし:東宮に学問を講じる官
作者
後三条天皇
出典
新古今和歌集
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