契りおくことこそさらになかりしか
かねて思ひし別れならねば
- 歌の意味
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再会を約束しておくことはまったくなかった。前もって思っていた別れではなかったので。
- 鑑賞
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巻第九 離別歌 880
詞書「にはかに都を離れて遠くまかりにけるに女に遣はしける」
帰りの時を約束しがたい別れを詠む一連の二首目である。急な旅立ちであったので、再会の約束をしておくこともまったくできなかったと、都に残した女に詠み送る。詞書によれば、にわかに都を離れて遠くへ下った際に女に贈った歌である。
作者の名は伝わらない。
場面はにわかに都を離れて遠くへ下ったとき、場所は都を離れた遠い地である。
直接の契機は、にわかに都を離れて遠くへ下ったことである。
初句「契りおく」は、前もって約束しておく、の意である。再会の約束を指す。
二句「ことこそさらに」は、係助詞「こそ」が約束を取り立て、「さらに」が打消と呼応して、まったく、の意となる。
三句「なかりしか」は、なかった、の意で、「こそ」を受けて過去の助動詞「き」の已然形「しか」で結び、三句切れとなる。
四句「かねて思ひし」は、前もって思っていた、の意である。
結句「別れならねば」は、別れではなかったので、の意で、倒置によって約束がなかった理由を最後に置く。前歌が世の無常を理由に待たせる約束をしなかったのに対し、本歌は別れが突然であったことを理由としており、約束のない別れを別の理由で詠んでいる。本巻の第八百六十三首が旅立ちを知らずに見送れなかった側の歌であったのと対になり、本歌は知らせる間もなく旅立った側の歌である。
ちぎりおく:前もって約束しておく
まかる:都から地方へ下る
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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