古典和歌stream

頼めおかむ君も心や慰むと
帰らむことはいつとなくとも

歌の意味
あてにさせておこう。そうすればあなたの心も慰むかと思って。帰ることはいつとも知れないけれども。
鑑賞
巻第九 離別歌 886

詞書「遠き所に修行せんとて出で立ち侍りけるに人々別れ惜しみてよみ侍りける」
 修行に出る別れを詠む一連の一首目である。帰る時は知れないが、あてにさせておけば相手の心も慰むだろうと詠む。詞書によれば、遠い所へ修行に出立する際、人々が別れを惜しんだので詠まれた。
 原文に作者名はなく、前歌に続いて西行の作である。俗名を佐藤義清といい、鳥羽院の北面の武士であったが出家し、諸国を旅して家集『山家集』を残した。
 場面は修行に出立するとき、場所は都である。
 直接の契機は、遠い所へ修行に出るにあたり、人々が別れを惜しんだことである。

 初句「頼めおかむ」の「頼め」は下二段活用で、あてにさせる意である。「む」は意志を表し、帰りをあてにさせておこうという心を示す。本巻の第八百七十九首が「えこそ頼めね」とあてにさせられないと詠んだのに対し、本歌は同じ修行の旅立ちでありながら、あえてあてにさせようとしており、二首が反転した構えを取る。
 二句「君も心や」は、あなたの心も、の意で、係助詞「や」が疑問を表し、三句の「慰む」を結ぶ。
 三句「慰むと」は、慰むだろうかと思って、の意である。約束が自分のためでなく相手のためであることが示される。
 四句「帰らむことは」は、帰ることについては、の意で、係助詞「は」が話題を改める。
 結句「いつとなくとも」は、いつとも知れないけれども、の意である。確かな約束ではないと自ら明かしたうえで、なお言葉にするところに、相手を思う心が表れている。

たのむ:下二段活用で、あてにさせる、期待させる
なぐさむ:心が晴れる、慰められる
しゅぎゃう:諸国をめぐって仏道の修行をすること
作者
西行
出典
新古今和歌集
その他の歌