忘るなよ宿る袂は変はるとも
かたみにしぼる夜半の月影
- 歌の意味
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忘れないでほしい。月の宿る袂は別々のものに変わっても、互いに涙で絞る、この夜半の月の光を。
- 鑑賞
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巻第九 離別歌 891
詞書は前の歌に続き「題しらず」
題しらずの別れを詠む一連の三首目である。月の宿る袂は別れて変わっても、互いに涙に絞る夜半の月の光を忘れるなと詠む。原文に詞書はなく、前歌の題をそのまま受けている。
作者は藤原俊成の子で、『新古今和歌集』の撰者の一人であり、のちに『新勅撰和歌集』を撰した。
場面は月の出ている夜半の別れ、場所は記されていない。
直接の契機は伝わらない。
初句「忘るなよ」は、忘れるな、の意で、禁止の「な」に詠嘆の「よ」が付き、ここで句切れとなる。本巻の第八百六十八首の結句「風な忘れそ」と同じく、贈る側が忘れないことを求める言葉である。
二句「宿る袂は」は、月の光が宿る袂は、の意である。涙に濡れた袖に月が映るという見立てで、袂が月の宿る場所となる。
三句「変はるとも」は、変わっても、の意で、逆接の仮定を表す。別れた後は、同じ月が別々の袂に宿ることになる。
四句「かたみにしぼる」の「かたみ」は、互いにの意と、形見の意を掛ける。互いに涙で袖を絞るという意と、その月の光が形見になるという意とが一語に収められている。
結句「夜半の月影」は体言止めで、忘れてはならないものを最後に示す。同じ月を介して離れた人と心を通わせる趣向は本巻の第八百七十七首と通い、形見によって別れを受け止める点では巻頭の第八百五十七首と響き合う。
かたみ:互いにの意と、形見の意を掛ける
しぼる:涙に濡れた袖を絞る
やどる:月の光が映る
- 作者
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藤原定家
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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