朝霧に濡れにし衣干さずして
一人や君が山路越ゆらん
- 歌の意味
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朝霧に濡れてしまった衣を乾かすこともなく、あなたはただ一人で山道を越えているのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十 羈旅歌 902
詞書「題しらず」
万葉の時代の旅の歌を並べる一連の七首目である。朝霧に濡れた衣を乾かすこともできず、あなたは一人で山道を越えているのだろうかと、旅に出た人を案じる。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
作者は「よみ人しらず」とあり、名は伝わらない。
場面は旅立った人を思う朝、場所は旅人の越えてゆく山路を思いやる、見送った側である。
直接の契機は伝わらない。
この歌は『万葉集』巻九に、作者未詳の歌として収められている。
初句「朝霧に」は、朝の霧に、の意で、旅の朝の冷たい湿り気を示す。
二句「濡れにし衣」は、濡れてしまった衣、の意である。「にし」は完了の助動詞「ぬ」の連用形に過去の助動詞「き」の連体形が付いた形である。
三句「干さずして」は、乾かすこともしないで、の意である。濡れた衣を干す暇もなく旅を急ぐさまが思いやられる。
四句「一人や君が」は、あなたは一人で、の意である。係助詞「や」による疑問で、結句の「らん」が連体形で結ばれる。「一人」の語に、連れのない旅の心細さが込められている。
結句「山路越ゆらん」は、山道を越えているのだろうか、の意である。「らん」は目の前にない現在の事柄を推し量る助動詞で、離れた所から旅人の姿を思い描いている。本巻の第九百六首の「今日や越えなん」が旅人自身の立場から山越えを詠むのに対し、この歌は見送った側から旅人の山越えを思いやっており、同じ山越えを反対の立場から詠んだ歌として対をなす。
やまぢ:山の中の道、山道
こゆ:越える
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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