信濃なる浅間の嶽に立つ煙
をちこち人の見やはとがめね
- 歌の意味
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信濃の国にある浅間の嶽に立ちのぼる煙を、遠くの人も近くの人も、見て不思議に思わないことがあろうか。
- 鑑賞
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巻第十 羈旅歌 903
詞書「東の方にまかりけるに浅間の嶽に煙の立つを見てよめる」
在原業平の東国への旅の歌二首の一首目である。信濃の浅間の嶽に立ちのぼる煙を、遠くの人も近くの人も見とがめずにはいないだろうと、噴煙の珍しさを詠む。詞書によれば、東国へ下る途中、浅間の嶽に煙が立つのを見て詠んだ歌である。
作者の「業平朝臣」は在原業平である。平城天皇の皇子阿保親王の子で、六歌仙の一人に数えられ、『伊勢物語』の主人公に擬せられてきた。
場面は東国へ下る旅の途中、場所は信濃国の浅間の嶽を望むところである。
直接の契機は、浅間の嶽に煙が立つのを見たことである。
この歌は『伊勢物語』第八段に、東国へ下る男が浅間の嶽の煙を見て詠んだ歌として見える。
初句「信濃なる」は、信濃の国にある、の意である。「なる」は存在を表す「なり」の連体形で、次歌の初句「駿河なる」と同じ形で国名を示し、二首が対になって並べられている。
二句「浅間の嶽に」は、信濃国の浅間山を指す。浅間山は煙を上げる山として知られた歌枕である。
三句「立つ煙」は、立ちのぼる煙、の意である。旅人の目に映った噴煙が体言で示され、下の句の「見やはとがめね」につながる。
四句「をちこち人の」は、遠くの人も近くの人も、の意である。「をちこち」は遠い所と近い所を表す語で、山の煙が広い範囲から見えることを示す。
結句「見やはとがめね」は、見て不審に思わないことがあろうか、の意である。係助詞「やは」は反語を表し、その結びは連体形の「ぬ」となるのが通例で、読み仮名の行もそのように読んでいる。旅人自身の驚きを、遠近の人々もまた驚くだろうという形で述べ、見慣れぬ東国の景物への感動を示している。巻頭からの万葉の旅の歌に続き、ここから平安時代の東国への旅の歌が始まる。
まかる:都から地方へ行く、下る
たけ:高い山、嶽
をちこち:遠い所と近い所
とがむ:見て不審に思う、気にかける
- 作者
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在原業平
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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