- 歌の意味
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旅の途中で、夕方の風が寒くなってきた。衣を打つ音が聞こえるあの家に、宿を借りようか。
- 鑑賞
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巻第十 羈旅歌 905
詞書は記されていない
平安時代の歌人による旅の歌を並べる一連の一首目である。旅の夕風が寒くなってきたので、衣を打つ音の聞こえる家に宿を借りようかと、旅の夕べの心細さを詠む。原文には詞書がなく、詠まれた事情は記されていない。
作者の紀貫之は、平安時代前期の歌人である。『古今和歌集』の撰者の一人で、仮名序を書き、『土佐日記』を著した。
場面は秋の夕暮れの旅の途中、場所は砧の音が聞こえる里の近くである。
直接の契機は伝わらない。
初句「草枕」は「旅」にかかる枕詞であるが、ここでは単独で旅の身の上を表している。
二句「夕風寒く」は、夕方の風が寒く、の意である。旅の途上で日が暮れてゆく時刻と、身にしみる寒さが示される。
三句「なりにけり」は、なってきたことだ、の意である。「けり」は気づきの詠嘆を表し、ここで句が切れる三句切れである。
四句「衣打つなる」は、衣を打つ音が聞こえる、の意である。「なる」は音によって推し量る助動詞「なり」の連体形で、姿は見えないまま砧の音で人家のあることを知る。砧は布を槌で打って柔らかくし、つやを出す作業で、秋の夜の寂しさを表す景物として詠まれる。本巻の第九百二首で濡れた「衣」を干すこともできない旅人が思いやられたのに続き、ここでも旅と衣が結び付けられている。
結句「宿や借らまし」は、宿を借りようか、の意である。「まし」はためらいを含んだ意志を表し、係助詞「や」とともに、どうしようかと思い迷う心を示す。人の営みの気配に心を寄せる旅人の心細さが表れている。
くさまくら:旅寝、旅の意。「旅」にかかる枕詞
きぬた:布を打って柔らかくしつやを出すための道具、またその作業
- 作者
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紀貫之
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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