立ちながら今宵は明けぬ園原や
伏屋といふもかひなかりけり
- 歌の意味
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立ったままで今夜は明けてしまった。園原の伏屋という名であっても、伏して寝ることができなければ甲斐のないことであった。
- 鑑賞
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巻第十 羈旅歌 913
詞書「信濃の御坂の方描きたる絵に園原といふ所に旅人宿りて立ち明かしたる所を」
旅の宿りを詠む一連の四首目である。立ったままで今夜は明けてしまった、園原の伏屋という名も、伏して寝ることができなければ甲斐がないと、眠れぬ旅の一夜を詠む。詞書によれば、信濃の御坂のあたりを描いた絵の、園原で旅人が宿を取り立ったまま夜を明かした場面を詠んだ歌である。
作者の藤原輔尹は、平安時代中期の官人で歌人である。「朝臣」は四位や五位の者の名に添える敬称である。
場面は旅人が宿りして夜を明かした夜、場所は信濃国の御坂に近い園原である。
直接の契機は、絵に描かれた場面を題として詠んだことである。
初句「立ちながら」は、立ったままで、の意である。横になって寝ることもできずに過ごした夜のさまを示す。
二句「今宵は明けぬ」は、今夜は明けてしまった、の意である。完了の「ぬ」で言い切る二句切れである。
三句「園原や」は、信濃国の歌枕である園原を呼び出す句である。園原は御坂の峠に近い地で、伏屋や帚木とともに詠まれる。助詞「や」は詠嘆を込めて地名を示す。
四句「伏屋といふも」は、伏屋という名であっても、の意である。「伏屋」は旅人を泊める粗末な小屋で、その名に「伏す」の意を読み取り、初句の「立ちながら」と対照させている。
結句「かひなかりけり」は、甲斐のないことであった、の意である。伏屋という名に反して伏すこともできなかったことを、気づきの「けり」で詠嘆している。本巻の第九百十首が宿のない旅を、前歌が旅寝の夢を詠んだのに対し、この歌は宿がありながら寝ることもできない一夜を詠み、宿りの一連を結んでいる。
みさか:信濃と美濃の境の峠、御坂
ふせや:屋根の低い粗末な小屋、旅人を泊める小屋
たちあかす:立ったまま夜を明かす
- 作者
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藤原輔尹
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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