わがごとく我を尋ねば海人小舟
人もなぎさの跡と答へよ
- 歌の意味
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私が探しているのと同じように私を探す人がいたならば、海人の小舟よ、人もいない渚に跡が残っているだけだと答えてくれ。
- 鑑賞
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巻第十 羈旅歌 917
詞書「磯の辺地の方に修行し侍りけるに一人具したりける同行を尋ね失ひてもとの岩屋の方へ帰るとて海人の見えけるに修行者見えばこれを取らせよとてよみ侍りける」
遠い旅路と水辺の旅を詠む一連の四首目である。私のように私を尋ねる者がいたら、海人の小舟よ、人もいない渚の跡だと答えてくれと、はぐれた同行への伝言を詠む。詞書によれば、海辺の修行の途中で一人連れていた同行の僧を見失い、もとの岩屋へ帰る時に、海人を見かけて、修行者が来たらこれを渡してくれと託した歌である。
作者の行尊は、平安時代後期の天台宗の僧である。参議源基平の子で、園城寺で修行し、大峰や熊野などの山々で修行を重ねた。のちに天台座主、大僧正となった。
場面は海辺の修行の途中、場所は磯辺の修行の道にある岩屋の近くの渚である。
直接の契機は、同行の修行者を見失ったことである。
初句「わがごとく」は、私のように、の意である。自分が同行を探しているのと同じように、という心を示す。
二句「我を尋ねば」は、私を尋ねる者があれば、の意である。未然形に「ば」が付いて仮定を表す。互いに相手を探し合う、はぐれた二人の姿が示される。
三句「海人小舟」は、海人の乗る小舟に呼びかける句である。伝言を託す相手を小舟として呼び、前歌の「船ながら」に続いて舟の景を連ねている。
四句「人もなぎさの」の「なぎさ」には、人も「無き」の意と「渚」が掛けられている。人影もない渚という寂しい景が一語に収められている。
結句「跡と答へよ」は、人のいない渚の跡だと答えてくれ、の意である。命令形で伝言を託して結ぶ。本巻の第九百二首が「一人や君が」と見送った人の一人旅を思いやったのに対し、この歌は同行を見失って一人となった旅人の歌であり、残された跡に、はぐれた者同士の心細さが込められている。
へち:海辺、磯辺の道
どうぎやう:ともに修行する仲間
いはや:岩の洞穴
あま:海で漁をする人、海人
なぎさ:人も「無き」の意と、「渚」を掛ける
- 作者
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行尊
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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