かき曇り夕たつ波の荒ければ
うきたる舟ぞしづ心なき
- 歌の意味
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空が一面に暗く曇り、夕立が来そうで夕べに立つ波が荒いので、浮いている舟は揺れて落ち着かず、憂いに沈む私の心も落ち着かない。
- 鑑賞
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巻第十 羈旅歌 918
詞書「湖の舟にて夕立のしぬべきよしを申しけるを聞きてよみ侍りける」
遠い旅路と水辺の旅を詠む一連の五首目である。空が暗く曇り、夕立を思わせる波が荒いので、浮いている舟は落ち着かないと、湖の舟上の不安を詠む。詞書によれば、湖の舟で夕立が来そうだと言うのを聞いて詠んだ歌である。
作者の紫式部は、藤原為時の娘である。一条天皇の中宮彰子に仕え、『源氏物語』や『紫式部日記』を著した。
場面は湖を舟で渡る夕方、場所は近江国の琵琶湖である。
直接の契機は、夕立が来そうだという知らせを聞いたことである。
この歌は『紫式部集』にも見え、父為時の越前国への下向に同行した旅の歌とされる。
初句「かき曇り」は、空が一面に暗く曇って、の意である。「かき」は動詞に付いて意味を強める接頭語である。
二句「夕たつ波の」の「たつ」には、「夕立」の意と、波が「立つ」の意が掛けられている。夕立の気配と荒れ始めた波とが一語に重ねられる。
三句「荒ければ」は、荒いので、の意である。已然形に「ば」が付いて理由を表す。
四句「うきたる舟ぞ」の「うき」には、水に「浮き」の意と「憂き」の意が掛けられている。係助詞「ぞ」によって強調され、結句の連体形「なき」で結ばれる。前歌の「海人小舟」に続いて舟が詠まれる。
結句「しづ心なき」は、落ち着いた心がない、の意である。舟の揺れと作者の心の揺れとが重ねられている。本巻の第九百十六首が波に夢を覚まされることもいとわず舟で旅寝をする楽しみを詠んだのに対し、この歌は荒れる波に落ち着かない舟の不安を詠み、同じ舟の上の心が対照的に並べられている。
たつ:夕立の意と、波が立つ意を掛ける
うき:水に「浮き」の意と、「憂き」の意を掛ける
しづごころ:落ち着いた心
- 作者
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紫式部
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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