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磯馴れぬ心ぞ堪へぬ旅寝する
芦の丸屋にかかる白波

歌の意味
磯の暮らしに慣れていない私の心は耐えられない。旅寝をしている芦葺きの粗末な小屋に打ちかかる白波には。
鑑賞
巻第十 羈旅歌 926

詞書「水辺旅宿といへる心をよめる」
 旅寝の寂しさを詠む一連の七首目である。磯の暮らしに慣れない心には耐えられない、旅寝する芦の丸屋に打ちかかる白波はと、水辺の旅寝の心細さを詠む。詞書によれば「水辺旅宿」の題で詠まれた。
 作者の源師賢は、平安時代中期の官人で歌人である。「朝臣」は四位や五位の者の名に添える敬称である。
 場面は水辺の旅寝の夜、場所は波の打ち寄せる芦の丸屋である。
 直接の契機は「水辺旅宿」の題による詠である。

 初句「磯馴れぬ」は、磯の暮らしに慣れていない、の意である。旅の身であり、海辺に住みなれた者ではないことを示す。
 二句「心ぞ堪へぬ」は、心は耐えられない、の意である。係助詞「ぞ」を受けて打消の「ぬ」が連体形で結ばれ、ここで句が切れる二句切れである。耐えられないものは倒置によって下の句に置かれる。
 三句「旅寝する」は、旅寝をする、の意である。次歌の初句も同じ「旅寝する」で始まる。
 四句「芦の丸屋に」は、芦で葺いた粗末な小屋に、の意である。次歌の二句「芦の丸屋の」と同じ語を共有し、二首が芦の丸屋の旅寝として並べられている。本巻の第九百二十二首の「芦の葉を刈り葺く」宿りと同じく、芦葺きの小屋が旅の宿りとなる。
 結句「かかる白波」は、打ちかかる白波、の意である。体言止めで、耐えがたいものを最後に示す。本巻の第九百十六首が波に夢を覚まされることもいとわず舟で旅寝を楽しんだのに対し、この歌は小屋に打ちかかる波に耐えられない心を詠んでおり、同じ水辺の旅寝が対照的に並べられている。

いそなる:磯の暮らしに慣れる
まろや:芦や茅で葺いた粗末な小屋
作者
源師賢
出典
新古今和歌集
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