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故郷の今日の面影誘ひ来と
月にぞ契る小夜の中山

歌の意味
故郷の人の今日の面影を誘って連れて来てくれと、月に約束を頼むことだ。小夜の中山で。
鑑賞
巻第十 羈旅歌 940

詞書は前の歌に続き「五十首の歌奉りし時」
 旅の月を詠む一連の十一首目である。故郷の人の今日の面影を誘って連れて来てくれと、小夜の中山で月に約束を頼むと、旅の山中から故郷を思う。詞書によれば、五十首歌を奉った時の歌である。
 作者の藤原雅経は、鎌倉時代初期の歌人である。『新古今和歌集』の撰者の一人で、飛鳥井家の祖となり、蹴鞠にも優れた。
 場面は旅の途中の夜、場所は遠江国の小夜の中山である。
 直接の契機は、後鳥羽院に五十首歌を奉った折の詠である。

 初句「故郷の」は、故郷の、の意である。前歌の第九百三十八首の「故郷の人」に続き、故郷に残した人が詠まれる。
 二句「今日の面影」は、今日の故郷の人の姿、の意である。遠く離れた今日この日の故郷の人の姿を思う。
 三句「誘ひ来と」は、誘って連れて来い、の意である。故郷の空をも照らす月に、面影を運んで来るよう頼む言葉である。
 四句「月にぞ契る」は、月に約束を頼む、の意である。係助詞「ぞ」を受けて連体形「契る」で結ばれる。本巻の第九百三十八首の「契り置きてし」が故郷の人との約束であったのに対し、ここでは月と約束を交わしている。
 結句「小夜の中山」は、遠江国の峠で、東海道の難所として知られた歌枕である。体言止めで場所が最後に示される。本巻の第九百七首が同じ中山で「見えぬ雲居」に行く末を思ったのに対し、この歌は同じ地で月に故郷の面影を託しており、同じ歌枕で旅の不安と故郷への思いが詠み分けられている。

おもかげ:心に浮かぶ人の姿
ちぎる:約束する
さそふ:誘って連れ出す
作者
藤原雅経
出典
新古今和歌集
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