知らざりし八十瀬の波を分け過ぎて
片敷くものは伊勢の浜荻
- 歌の意味
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これまで知らなかった数多くの瀬の波を分けて渡り過ぎてきて、独り寝に片敷くものは、伊勢の浜荻である。
- 鑑賞
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巻第十 羈旅歌 944
詞書「百首歌奉りし時」
伊勢の浜荻を詠む一連の二首目である。見知らぬ幾つもの瀬の波を分けて渡ってきて、独り寝に片敷くものは伊勢の浜荻であると、伊勢への旅の果ての寝床を詠む。詞書によれば、百首歌を奉った時の歌である。
作者の宜秋門院丹後は、鎌倉時代初期の女房歌人である。後鳥羽天皇の中宮任子、のちの宜秋門院に仕えた。
場面は伊勢への旅の夜、場所は伊勢の浜辺である。
直接の契機は、後鳥羽院に百首歌を奉った折の詠である。
「八十瀬」は、伊勢へ向かう道の鈴鹿川の多くの瀬をいう。
初句「知らざりし」は、これまで知らなかった、の意である。過去の「し」で、旅に出るまで見たこともなかったことを示す。
二句「八十瀬の波を」は、数多くの瀬の波を、の意である。伊勢への道にある鈴鹿川の多くの瀬を渡る旅が示される。
三句「分け過ぎて」は、分けて渡り過ぎて、の意である。次歌の三句「分けゆけば」とも「分け」の語でつながる。
四句「片敷くものは」は、独り寝に片敷くものは、の意である。本巻の第九百二十二首の「衣片敷き」、第九百二十九首の「片敷く袖」に続いて、独り寝が詠まれる。
結句「伊勢の浜荻」は、伊勢の浜辺に生える荻、の意で、体言止めで結ばれる。前歌と同じ結句で、二首が伊勢の浜荻で結ばれる。前歌が浜荻の寝床で重ねた夜を詠んだのに対し、この歌はそこに至るまでの川瀬の道のりを詠み、同じ寝床を時の重なりと道のりという異なる尺度でとらえている。
やそせ:数多くの瀬
かたしく:自分の衣の片袖だけを敷いて独り寝をする
はまをぎ:浜辺に生える荻、伊勢では葦をいう
- 作者
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宜秋門院丹後
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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