松が根の雄島が磯のさ夜枕
いたくな濡れそ海人の袖かは
- 歌の意味
-
松の根の生える雄島の磯で旅寝する夜の枕よ、そんなにひどく濡れるな。海人の袖であるわけでもないのに。
- 鑑賞
-
巻第十 羈旅歌 948
詞書は前の歌に続き「百首歌奉りしに」
旅の枕を詠む一連の三首目である。松の根の雄島の磯で結ぶ夜の枕よ、ひどく濡れるな、海人の袖でもあるまいにと、涙に濡れる旅寝の枕を詠む。詞書によれば、百首歌を奉った時の歌である。
作者名は記されておらず、前歌に続いて式子内親王の作である。式子内親王は後白河天皇の皇女で、賀茂の斎院を務めた。
場面は旅寝の夜、場所は陸奥国の松島の雄島の磯である。
直接の契機は、後鳥羽院に百首歌を奉った折の詠である。
初句「松が根の」は、松の根の生える、の意である。本巻の第九百二十九首の初句「松が根に」と同じく、松の根元の旅寝が示される。
二句「雄島が磯の」は、松島の雄島の磯の、の意である。本巻の第九百三十三首の「雄島の苫屋」に続き、陸奥の歌枕雄島が詠まれる。
三句「さ夜枕」は、夜の枕、旅寝の枕、の意である。「さ」は語調を整える接頭語である。
四句「いたくな濡れそ」は、ひどく濡れるな、の意である。「な…そ」は禁止を表し、枕に向かって呼びかけている。枕の濡れる原因が涙であることを、裏から示す。
結句「海人の袖かは」は、海人の袖であろうか、そうではないのに、の意である。「かは」は反語を表す。雄島の海人の袖は、潮に濡れる袖として古歌に詠まれてきた。前歌が草を結んで枕とする旅寝を詠んだのに続き、この歌はその枕の涙に濡れるさまを詠み、旅の枕の歌が続いている。
さよまくら:夜の枕、旅寝の枕
あま:海で漁をする人、海人
- 作者
-
式子内親王
- 出典
-
新古今和歌集
- その他の歌
-