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白雲の幾重の峰を越えぬらん
馴れぬ嵐に袖を任せて

歌の意味
白雲のかかる峰を、いったい幾重越えてきたのだろう。吹き慣れない嵐に、袖を吹かれるにまかせて。
鑑賞
巻第十 羈旅歌 955

詞書は前の歌に続き「旅の歌とてよめる」
 日暮れの旅路と宿を詠む一連の六首目である。慣れない嵐に袖を吹かれるにまかせて、白雲のかかる峰を幾重越えてきたのだろうと、山また山の旅路を振り返る。詞書によれば、旅の歌として詠まれた。
 作者の藤原雅経は、鎌倉時代初期の歌人で、『新古今和歌集』の撰者の一人である。
 場面は山々を越えてゆく旅の途中、場所は白雲のかかる峰の続く山路である。
 直接の契機は「旅」を題として詠んだことである。

 初句「白雲の」は、白雲のかかる、の意である。本巻の第九百三十九首の「末の白雲」、第九百五十首の「白雲のかかる旅寝」に続き、白雲のかかる山が詠まれる。
 二句「幾重の峰を」は、幾重にも重なる峰を、の意である。越えてきた山の多さが示される。
 三句「越えぬらん」は、越えてきたのだろうか、の意である。完了の「ぬ」に推量の「らん」が付き、ここで句が切れる三句切れである。本巻の第九百三十九首が明日越えるべき峰を思ったのに対し、ここでは越えてきた峰を振り返る。
 四句「馴れぬ嵐に」は、吹き慣れない嵐に、の意である。前歌の、故郷とは声も似ない嵐を受けた語であり、本巻の第九百五十首の「習はぬ」と同じく、旅の身の慣れなさが詠まれる。
 結句「袖を任せて」は、袖を吹かれるにまかせて、の意である。倒置によって、嵐に抗うすべもない旅人の姿が最後に示される。本巻の第九百五十三首の「袖吹き返す秋風」と同じく、風に吹かれる旅人の袖が詠まれる。

いくへ:幾重、いくつも重なっていること
作者
藤原雅経
出典
新古今和歌集
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