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岩が根の床に嵐を片敷きて
一人や寝なん小夜の中山

歌の意味
岩の根元を床として、袖の代わりに嵐を片敷いて、一人で寝ることになるのだろうか。小夜の中山で。
鑑賞
巻第十 羈旅歌 962

詞書「石清水歌合に旅宿嵐といふ心を」
 日暮れの旅路と宿を詠む一連の十三首目である。岩の根元を床とし、嵐を片敷いて一人で寝るのだろうかと、小夜の中山での厳しい旅寝を詠む。詞書によれば、石清水の歌合で「旅宿嵐」の題で詠まれた。
 作者名は記されておらず、前歌に続いて藤原有家の作である。藤原有家は藤原重家の子で、鎌倉時代初期の歌人である。『新古今和歌集』の撰者の一人である。
 場面は旅寝の夜、場所は遠江国の小夜の中山である。
 直接の契機は、石清水八幡宮で催された歌合の「旅宿嵐」の題による詠である。

 初句「岩が根の」は、岩の根元の、の意である。宿のない山中の旅寝の場所が示される。
 二句「床に嵐を」は、床に嵐を、の意である。本来は袖を敷くべきところに嵐を置く、意表をつく表現である。
 三句「片敷きて」は、片敷いて、の意である。本巻の第九百二十九首の「片敷く袖に」、第九百四十四首の「片敷くものは」に続き、独り寝の「片敷く」が詠まれ、ここでは片敷くものが嵐とされている。
 四句「一人や寝なん」は、一人で寝ることになるのだろうか、の意である。係助詞「や」を受けて、強意の「な」に推量の「ん」が付いた「なん」が連体形で結ばれる。
 結句「小夜の中山」は、遠江国の峠で、東海道の難所として知られた歌枕である。体言止めで場所が最後に示される。本巻の第九百五十四首が同じ中山の嵐に故郷を忘れよと詠んだのに続き、ここでは同じ地の嵐を寝床に敷く旅寝が詠まれ、小夜の中山の嵐の歌が重ねて置かれている。

いはがね:岩の根元、大きな岩
かたしく:自分の衣の片袖だけを敷いて独り寝をする
作者
藤原有家
出典
新古今和歌集
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