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誰となき宿の夕べを契りにて
変はる主を幾夜問ふらん

歌の意味
誰と決まっているわけでもない宿での夕べを約束のようにして、夜ごとに変わる宿の主を、幾夜訪ねることになるのだろうか。
鑑賞
巻第十 羈旅歌 963

詞書「旅歌とて」
 日暮れの旅路と宿を詠む一連の十四首目である。誰と決まってもいない宿の夕べを頼みとして、夜ごとに変わる宿の主を幾夜訪ねるのだろうと、宿を替えて続く旅を詠む。詞書によれば、旅の歌として詠まれた。
 作者の藤原業清は、鎌倉時代初期の歌人で、生没年は確かでない。
 場面は旅の夕べ、場所は宿を求める旅路である。
 直接の契機は「旅」を題として詠んだことである。

 初句「誰となき」は、誰と決まっているわけでもない、の意である。行きずりの宿であることを示す。
 二句「宿の夕べを」は、宿を借りる夕べを、の意である。本巻の第九百五十二首の「今宵は宿を」に続き、夕べに宿を求める旅が詠まれる。
 三句「契りにて」は、約束のようにして、の意である。本巻の第九百三十八首、第九百四十首では故郷の人や月との約束であった「契り」が、ここでは見知らぬ宿との頼りない約束とされている。
 四句「変はる主を」は、夜ごとに変わる宿の主を、の意である。宿を替えて進む旅のさまが示される。
 結句「幾夜問ふらん」は、幾夜訪ねるのだろうか、の意である。本巻の第九百六十一首が「ひとよばかり」の旅寝を詠んだのに対し、この歌は宿を替えて幾夜も続く旅を詠み、一夜と幾夜という尺度で対をなしている。

あるじ:その家の主人
ちぎり:約束
作者
藤原業清
出典
新古今和歌集
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