忘れなむまつとな告げそなかなかに
いなばの山の峰の秋風
- 歌の意味
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いっそ忘れてしまおう。待っているなどと告げてくれるな、かえってつらいから。因幡の山の峰を吹く秋風よ。
- 鑑賞
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巻第十 羈旅歌 968
詞書「摂政太政大臣の家の歌合に秋旅といふことを」
旅の道すがらの景と思いを詠む一連の四首目である。いっそ故郷を忘れてしまおう、待っているなどと告げるな、かえってつらいからと、因幡の山の峰を吹く秋風に呼びかける。詞書によれば、摂政太政大臣の家の歌合で「秋旅」の題で詠まれた。
作者の藤原定家は、藤原俊成の子で、鎌倉時代初期の歌人である。『新古今和歌集』の撰者の一人である。
場面は秋の旅の途中、場所は因幡国の稲羽山である。
直接の契機は、摂政太政大臣藤原良経の家で催された歌合の「秋旅」の題による詠である。
本歌は『古今和歌集』離別歌の在原行平の歌「立ち別れいなばの山の峰に生ふるまつとし聞かば今帰り来む」で、「いなばの山」「峰」「まつ」の語を取っている。任地の因幡へ発つ時に、待っていると聞いたらすぐに帰ろうと詠んだ歌である。
初句「忘れなむ」は、いっそ忘れてしまおう、の意である。強意の「な」に意志の「む」が付き、故郷への思いを断とうとする。ここで句が切れる初句切れである。本巻の第九百五十四首の「忘れね人を」と同じく、故郷を忘れようとする心が詠まれる。
二句「まつとな告げそ」の「まつ」には、「待つ」と「松」が掛けられている。「な…そ」は禁止を表す。本歌では待っていると聞けば帰ろうと詠んだのに対し、ここでは待っていると告げるなと、本歌の心を反転させている。
三句「なかなかに」は、かえって、なまじ、の意である。待っていると聞けば、帰れない身にはかえってつらいことを示す。ここで句が切れる三句切れである。
四句「いなばの山の」の「いなば」には、「去なば」と「因幡」が掛けられている。本歌と同じ語である。
結句「峰の秋風」は、峰を吹く秋風、の意で、体言止めで呼びかけの対象を示す。前歌の「とこの山風」、第九百六十六首の「秋風ぞ吹く」に続き、秋の風の歌が三首並べられている。
まつ:「待つ」の意と、「松」を掛ける
いなば:「去なば」の意と、因幡国の「因幡」を掛ける
- 作者
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藤原定家
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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