日を経つつ都しのぶのうらさびて
波よりほかの訪れもなし
- 歌の意味
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日が経つにつれて、都を偲ぶ心は、信夫の浦のように寂しさを増し、打ち寄せる波のほかには訪れるものもない。
- 鑑賞
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巻第十 羈旅歌 971
詞書「歌合し侍りける時旅の心をよめる」
海辺の旅を詠む一連の三首目である。日を重ねるにつれ都を偲ぶ心は寂しさを増し、信夫の浦には波のほかに訪れるものもないと、遠い浦で都を思う旅人の孤独を詠む。詞書によれば、歌合を催した時に旅の心を詠んだ歌である。
作者の「入道前関白太政大臣」は藤原兼実である。関白藤原忠通の子で、摂政、関白、太政大臣を務め、のちに出家した。九条家の祖で、九条兼実とも呼ばれ、日記『玉葉』を残した。
場面は旅に日を重ねた頃、場所は陸奥国の信夫の浦である。
直接の契機は、作者が催した歌合での「旅の心」の題による詠である。
初句「日を経つつ」は、日が経つにつれて、の意である。「つつ」は継続を表し、旅の日数の重なりを示す。
二句「都しのぶの」の「しのぶ」には、都を「偲ぶ」の意と、陸奥国の歌枕「信夫」が掛けられている。
三句「うらさびて」の「うら」には、「浦」と、心の意の「うら」が掛けられている。信夫の浦が寂しいさまと、心が寂しいさまとが一語に重ねられている。
四句「波よりほかの」は、波のほかには、の意である。打ち寄せる波だけが訪れるものであることを示す。
結句「訪れもなし」は、訪れるものもない、の意である。本巻の第九百三十首の「とふの浦風音せぬに」と同じく、陸奥の浦で都からの訪れのない寂しさを詠んでいる。前歌が故郷の人の袖を越える波を思いやったのに対し、この歌は旅人のもとに波だけが訪れるさまを詠み、同じ波が故郷の側と旅人の側に分けて詠まれている。
しのぶ:都を「偲ぶ」の意と、陸奥国の歌枕「信夫」を掛ける
うら:「浦」の意と、心の意の「うら」を掛ける
おとづれ:訪れること、便り
- 作者
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藤原兼実
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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