難波人芦火焚く屋に宿借りて
すずろに袖のしほたるるかな
- 歌の意味
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難波の人が芦を燃やして火を焚く家に宿を借りて、わけもなく袖が潮水に濡れるように涙に濡れることだ。
- 鑑賞
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巻第十 羈旅歌 973
詞書「入道前関白家百首歌に旅の心を」
海辺の旅を詠む一連の五首目である。難波の人が芦火を焚く家に宿を借りると、わけもなく袖が涙に濡れると、海辺の粗末な宿りでの旅の悲しみを詠む。詞書によれば、入道前関白の家の百首歌で旅の心を詠んだ歌である。
作者の「皇太后宮大夫俊成」は藤原俊成である。平安時代後期から鎌倉時代初期の歌人で、『千載和歌集』を撰進し、藤原定家の父である。
場面は旅の夜、場所は摂津国の難波の海辺の家である。
直接の契機は、入道前関白藤原兼実の家で詠まれた百首歌の「旅の心」の題による詠である。
初句「難波人」は、難波の地に住む人、の意である。本巻の第九百十九首に続き、難波が旅の宿りの地として詠まれる。
二句「芦火焚く屋に」は、芦を燃やして火を焚く家に、の意である。芦の茂る難波の暮らしが示され、粗末な宿りであることが分かる。
三句「宿借りて」は、宿を借りて、の意である。本巻の第九百五十二首の「宿をかり衣」と同じく、宿を借りる旅が詠まれ、ここでは実際に宿を得ている。
四句「すずろに袖の」は、わけもなく袖が、の意である。理由の定かでない涙であることを示す。
結句「しほたるるかな」は、潮水に濡れるように涙に濡れることだ、の意である。「しほたる」は海辺の縁語であり、潮に濡れる意と、涙に濡れる意を併せ持つ。前歌が海人の苫屋での旅寝を詠んだのに続き、この歌も海辺の民の家での宿りを詠み、前々歌の作者藤原兼実の家の百首歌として配列されている。
あしび:芦を燃やして焚く火
しほたる:潮水に濡れてしずくが垂れる、涙に濡れる
- 作者
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藤原俊成
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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