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道すがら富士の煙もわかざりき
晴るる間もなき空の気色に

歌の意味
道中ずっと、富士山の煙も見分けられなかった。晴れる間もない空の様子のために。
鑑賞
巻第十 羈旅歌 975

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 旅の述懐を詠む一連の二首目である。道中ずっと晴れる間もない空模様で、富士の煙さえ見分けられなかったと、東海道の旅路の景を詠む。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者の「前右大将頼朝」は源頼朝である。源義朝の子で、鎌倉幕府を開き、右近衛大将、征夷大将軍となった。
 場面は東海道の旅の道中、場所は富士山を望む道である。
 直接の契機は伝わらない。

 初句「道すがら」は、道中ずっと、の意である。旅路の全体を通しての景を示す。
 二句「富士の煙も」は、富士山の煙も、の意である。富士山は煙を上げる山として詠まれた歌枕である。本巻の第九百三首、第九百五十八首で詠まれた浅間山の煙に続き、東国の山の煙が詠まれる。
 三句「わかざりき」は、見分けられなかった、の意である。過去の「き」で言い切る三句切れである。
 四句「晴るる間もなき」は、晴れる間もない、の意である。雲の晴れない空が示される。
 結句「空の気色に」は、空の様子のために、の意である。倒置によって見分けられなかった理由が最後に置かれる。第九百三首が遠近の人々も見とがめるほどの浅間の煙を詠んだのに対し、この歌は名高い富士の煙さえ見えない旅路を詠んでおり、煙が見える見えないの対照をなしている。

わく:見分ける、区別する
けしき:ありさま、様子
作者
源頼朝
出典
新古今和歌集
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