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また越えん人も止まらばあはれ知れ
我が折り敷ける峰の椎柴

歌の意味
この後また越えてゆく人も、ここに泊まったならば、しみじみとした思いを知ってくれ。私が折り敷いて寝床とした、この峰の椎の柴よ。
鑑賞
巻第十 羈旅歌 974

詞書「題しらず」
 旅の述懐を詠む一連の一首目である。後にこの峰を越える人がここに泊まったなら、私が折り敷いた椎柴を見てあわれを知ってくれと、旅寝の跡に思いを託す。詞書は題しらずで、詠まれた事情は記されていない。
 作者の雅縁は、鎌倉時代初期の興福寺の僧で、僧正に至った。
 場面は峰での旅寝の後、場所は椎柴の茂る峰である。
 直接の契機は伝わらない。

 初句「また越えん」は、この後また越えてゆくであろう、の意である。自分の後に同じ峰を越える旅人を思う。
 二句「人も止まらば」は、その人もここに泊まったならば、の意である。未然形に「ば」が付いて仮定を表す。
 三句「あはれ知れ」は、しみじみとした思いを知ってくれ、の意である。命令形で言い切る三句切れである。本巻の第九百十七首が同行に宛てて言葉を残したのと同じく、後から来る人に向けて呼びかけている。
 四句「我が折り敷ける」は、私が折って敷いた、の意である。本巻の第九百四十三首の「波に折り敷く」と同じく、草木を折り敷いた旅寝の床が詠まれる。
 結句「峰の椎柴」は、峰に生える椎の柴、の意で、体言止めで呼びかけの対象を示す。旅寝の跡となった椎柴に、次の旅人への思いを託して結ぶ。前歌までの海辺の旅から、ここで山の峰の旅へと移り、旅の述懐の歌が続く。

しひしば:椎の木の小枝、柴
をりしく:折って下に敷く
作者
雅縁
出典
新古今和歌集
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