今来むと言ひて別れし朝より
思ひくらしの音をのみぞなく
- 歌の意味
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すぐに来ようと言って別れた朝から、一日中あの人を思って暮らし、ひぐらしが鳴くように声をあげて泣いてばかりいる。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 771
詞書「題しらず」
すぐまた来ると言って別れた朝から、一日中恋人を思って泣き暮らしていると詠む歌である。男性の作ながら女性の立場で詠まれており、「思ひ暮らし」から「ひぐらし」を導く掛詞によって、夕暮れまで泣き続ける心を蝉の声に重ねている。次歌と「ひぐらし」を共有する。
作者の「僧正へんせう」は遍昭である。俗名を良岑宗貞といい、桓武天皇の孫で大納言良岑安世の子である。仁明天皇に仕えて蔵人頭となったが、天皇の崩御により出家し、のちに僧正となった。六歌仙、三十六歌仙の一人である。
初句「今来むと」は、すぐに来ようの意で、別れ際の恋人の約束の言葉である。
二句「言ひて別れし」は、「し」が過去の助動詞「き」の連体形で、そう言って別れたの意となる。
三句「朝より」は、翌朝の別れの時をいい、そこから時間が経っていくことを示す。
四句「思ひくらしの」は、「くらし」に一日を「思ひ暮らし」と、蝉の「ひぐらし」を掛ける。
結句「音をのみぞなく」は、「ね」が声の意、「なく」に蝉が「鳴く」意と自分が「泣く」意を掛ける。係助詞「ぞ」を連体形で結び、泣くばかりである嘆きを強める。
あした:翌朝、朝
おもひくらす:一日中思い続けて過ごす意に、蝉の「ひぐらし」を掛ける
ね:声、鳴き声
なく:蝉が「鳴く」意と、人が「泣く」意を掛ける
- 作者
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遍昭
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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我が宿は道もなきまで荒れにけり つれなき人を待つとせしまに
- 次の歌
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来めやとは思ふものからひぐらしの 鳴く夕暮れは立ち待たれつつ