古典和歌stream

我が宿は道もなきまで荒れにけり
つれなき人を待つとせしまに

歌の意味
私の家は道も見えなくなるほどに荒れてしまった。冷淡な人を待ち続けていた間に。
鑑賞
巻第十五 恋歌五 770

詞書「題しらず」
 冷たい恋人を待ち続けている間に、家は道もわからなくなるほど荒れ果ててしまったと詠む歌である。荒れた庭という目に見える変化で、待った月日の長さと空しさを表している。ここから人を待つ歌の一連が始まる。
 作者の「僧正へんせう」は遍昭である。俗名を良岑宗貞といい、桓武天皇の孫で大納言良岑安世の子である。仁明天皇に仕えて蔵人頭となったが、天皇の崩御により出家し、のちに僧正となった。六歌仙、三十六歌仙の一人である。

 初句「我が宿は」は、私の家はの意で、恋人の訪れを待つ場所を示す。
 二句「道もなきまで」は、道もなくなるほどにの意で、人の通わない庭に草が茂ったさまをいう。恋人の通う道が絶えたことを暗示する。
 三句「荒れにけり」は、「にけり」が完了と詠嘆で、すっかり荒れてしまったことに気づく。ここで句切れとなり、倒置の構成となる。
 四句「つれなき人を」は、冷淡な人、薄情な人の意で、訪れない恋人を指す。
 結句「待つとせしまに」は、待つとしていた間にの意で、三句の荒廃の原因を倒置で後から示す。「せしまに」の言いさしに余情がある。

やど:家、住まい
つれなし:冷淡である、そっけない
作者
遍昭
出典
古今和歌集
前の歌
独りのみながめふるやのつまなれば 人をしのぶの草ぞ生ひける
次の歌
今来むと言ひて別れし朝より 思ひくらしの音をのみぞなく