独りのみながめふるやのつまなれば
人をしのぶの草ぞ生ひける
- 歌の意味
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ただ独りで長雨の降るのを眺めながら物思いに沈み、日々を過ごす古い家の軒端なので、人を偲ぶという名の忍ぶ草が生えていることだ。
- 鑑賞
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巻第十五 恋歌五 769
詞書「題しらず」
独りで物思いにふけりながら暮らす古家の軒端に、しのぶ草が生えていることから、恋人を偲ぶ自分の心を詠んだ歌である。「ながめ」「ふる」「つま」「しのぶ」と掛詞を重ね、荒れた家の情景と恋人を待つ孤独な心とをひとつに織り上げている。
作者の「さたののほる」は貞登である。仁明天皇の皇子で、母は更衣の三国町である。はじめ源の姓を賜って源登と称したが、母の密通が疑われたことから属籍を除かれて出家した。貞観八年(866)に還俗したものの源の姓には戻れず、貞の姓を賜った。
初句「独りのみ」は、ただ独りでの意で、恋人の訪れのない孤独な暮らしを示す。
二句「ながめふるやの」は、「ながめ」に物思いにふけって眺める意と「長雨」を、「ふる」に時を「経る」意と雨が「降る」意、さらに「古屋」を掛ける。
三句「つまなれば」は、「つま」に軒端の意の「端」と、配偶者の意の「妻」を掛ける。「なれば」は理由を示す。
四句「人をしのぶの」は、「しのぶ」に人を「偲ぶ」意と、植物の「忍ぶ草」を掛けた掛詞である。
結句「草ぞ生ひける」は、係助詞「ぞ」を過去の助動詞「けり」の連体形で結ぶ。古家の軒に生えた忍ぶ草に、恋人を思い続ける心が形となって現れている。
ながめ:物思いにふけって眺める意の「眺め」と、「長雨」を掛ける
ふる:時を過ごす意の「経る」と、雨が「降る」意を掛け、「古屋」を導く
つま:軒の端の意の「端」と、「妻」を掛ける
しのぶ:人を「偲ぶ」意と、植物の「忍ぶ草」を掛ける
ふるや:古くなった家
- 作者
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貞登
- 出典
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古今和歌集
- 前の歌
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唐土も夢に見しかば近かりき 思はぬ仲ぞはるけかりける
- 次の歌
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我が宿は道もなきまで荒れにけり つれなき人を待つとせしまに