ちはやぶる賀茂の社の姫小松
万代経とも色は変はらじ
- 歌の意味
-
賀茂の社の小さな姫小松は、万代を経ても緑の色は変わらないだろう。
- 鑑賞
-
巻第二十 大歌所御歌 1100
詞書「冬の賀茂の祭の歌」
賀茂の社の小松が万代を経ても色を変えないように、祭りと御代の永続を寿ぐ。冬の賀茂の祭は宇多天皇の寛平元年に始められた賀茂の臨時祭で、その東遊びの歌として詠まれた。古今和歌集全二十巻の最後を飾る一首であり、常緑の松に永遠を託して歌集全体を祝いの言葉で閉じている。
作者の「藤原敏行朝臣」は、藤原富士麿の子で、蔵人頭、右兵衛督などを務めた。三十六歌仙の一人で、能書家としても知られる。
東歌の後に置かれた歌で、東遊びの歌として賀茂の臨時祭で歌われたことによる配置とされる。
初句「ちはやぶる」は、「賀茂」など神に関わる語にかかる枕詞である。
二句「賀茂の社の」は、京都の賀茂神社(上賀茂神社と下鴨神社)を示す。
三句「姫小松」は、小さくかわいらしい松の意で、社に生える若い松を示す。三句切れではなく、下の句の主語となる。
四句「万代経とも」は、万代を経てもの意で、「とも」は逆接の仮定を表す。本巻の第千六十九首の「千年をかねて」、第千八十三首と第千八十四首の「万代までに」を受け、巻末で永遠の寿ぎを重ねて巻頭と呼応する。
結句「色は変はらじ」は、緑の色は変わらないだろうの意で、「じ」は打消しの推量を表す。常緑の松に不変を託して歌集全体を結ぶ。
ひめこまつ:小さくかわいらしい松
あづまあそび:東国の風俗歌舞をもとにした宮廷の歌舞
- 作者
-
藤原敏行
- 出典
-
古今和歌集
- 前の歌
-
をふの浦に片枝さしおほひなる梨の なりもならずも寝て語らはむ