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淡路の野島が崎の浜風に
妹が結びし紐吹き返す

歌の意味
淡路の野島の崎の浜風に、妻が結んでくれた衣の紐がひるがえっている。
鑑賞
巻第三 雑歌 251

詞書は前の歌に続き「柿本朝臣人麻呂の羈旅の歌八首」
 羈旅の歌八首の三首目である。旅立ちの時に妻が結んでくれた衣の紐が、野島の崎の浜風にはためくのを見て、家に残した妻を思っている。紐を結ぶことは、再び会うまで解かないという夫婦の契りでもあった。風の中の紐という小さな景に望郷の思いを託した名歌である。
 羈旅の歌八首は、難波から瀬戸内海を西へ下り、また大和へ帰る船旅を、地名を連ねてたどる連作である。一首目の第二百四十九首は下の句が難訓である。
 作者の柿本人麻呂は、持統朝から文武朝にかけて活躍した宮廷歌人で、長歌と短歌の両方にすぐれ、後世「歌聖」と仰がれた。官位は低く、その生涯には不明な点が多い。

 初句「淡路の」 四音の字足らずである。淡路島を示し、前歌の到着地を受けている。
 二句「野島が崎の」 前歌の四句と同じ地名を受け継いでいる。
 三句「浜風に」 岬に吹きつける海からの風で、旅の厳しさも感じさせる。
 四句「妹が結びし」 妹は妻、「し」は過去の助動詞「き」の連体形で、出立の時に妻が結んだことを示している。
 結句「紐吹き返す」 紐が風にひるがえるさまを描き、そこに妻への思いを重ねて結んでいる。

いも:男性が妻や恋人を親しんで呼ぶ語
ひも:衣の紐。旅立ちに妻が結び、再会まで解かないとされた
作者
柿本人麻呂
出典
万葉集
前の歌
玉藻刈る敏馬を過ぎて夏草の 野島が崎に船近づきぬ
次の歌
荒栲の藤江の浦に鱸釣る 海人とか見らむ旅行く我れを