- 歌の意味
-
梅の花が散るのを惜しんで、わが庭の竹林で鶯が鳴いている。
- 鑑賞
-
巻第五 雑歌 824
詞書は前の歌に続き「梅花の歌三十二首 并せて序」
梅の花が散るのを惜しんで、庭の竹林で鶯が鳴いていると詠む一首である。梅と鶯という春の取り合わせを用い、鶯の声に落花を惜しむ人々の心を重ねている。
天平二年正月十三日、大宰帥大伴旅人の邸宅に大宰府の官人や九州諸国の国司らが集い、庭の梅を題に詠み合った「梅花の宴」の歌三十二首の一首である。漢文の序は、初春の令月に気は良く風は和らぎ、梅は鏡の前の白粉のように白く開き、蘭は身に帯びた香のように薫ると記し、令和の元号の典拠となったことでも知られる。序は、中国の詩文に落梅の篇があるように、園の梅を題に短歌を詠もうと結ばれている。歌の末尾に「小監阿氏奥嶋」とある。小監は大監に次ぐ大宰府の判官で、阿氏の一字をどの氏族に当てるかについては、阿倍、阿刀、阿曇などの説があり定まらない。
作者の阿氏奥嶋は、大宰府の小監の任にあった官人である。
初句「梅の花」は、宴の主題を掲げる。
二句「散らまく惜しみ」の「散らまく」は散るであろうこと、「惜しみ」はそれを惜しんで、の意である。本巻の第八百四十二首は同じ「散らまく惜しみ」を結句に置き、語順を入れ替えた形で詠まれている。
三句「我が園の」は、宴の開かれている庭をいう。
四句「竹の林に」は、庭の竹林で、梅の木に対して鶯のひそむ場所を示す。
結句「鴬鳴くも」の「も」は詠嘆で、鶯の声を聞きとめて結ぶ。第八百四十二首も「鴬鳴くも」の句をもつ。
うぐひす:鶯。春を告げる鳥として梅と取り合わされる
- 作者
-
阿氏奥嶋
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
梅の花散らくはいづくしかすがに この城の山に雪は降りつつ
- 次の歌
-
梅の花咲きたる園の青柳を 蘰にしつつ遊び暮らさな