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梅の花散らくはいづくしかすがに
この城の山に雪は降りつつ

歌の意味
梅の花が散るというのはどこのことだろう。そうはいっても、この城の山には雪が降り続いている。
鑑賞
巻第五 雑歌 823

詞書は前の歌に続き「梅花の歌三十二首 并せて序」
 梅の花が散るというのはどこのことか、それでもこの城の山には雪が降り続いていると詠む一首である。主人旅人の前歌が落花を雪に見立てたのを受け、本物の雪は山に降っていると応じて、見立ての趣向を一座で楽しむ機知を示している。
 天平二年正月十三日、大宰帥大伴旅人の邸宅に大宰府の官人や九州諸国の国司らが集い、庭の梅を題に詠み合った「梅花の宴」の歌三十二首の一首である。漢文の序は、初春の令月に気は良く風は和らぎ、梅は鏡の前の白粉のように白く開き、蘭は身に帯びた香のように薫ると記し、令和の元号の典拠となったことでも知られる。序は、中国の詩文に落梅の篇があるように、園の梅を題に短歌を詠もうと結ばれている。歌の末尾に「大監伴氏百代」とある。大監は大宰府の判官のうち上位の官で、伴氏は大伴氏を中国風に一字で表したものである。
 作者の大伴百代は、大伴氏の一族の官人で、この時大宰大監の任にあった。

 初句「梅の花」は、前歌の二句「梅の花散る」を受けて起こす。
 二句「散らくはいづく」の「散らく」は「散ること」の意で、梅が散るのはどこのことかと問い、ここで句が切れる。
 三句「しかすがに」は、そうはいうものの、の意で、前歌の見立てを受け止めつつ現実の景へと転じる。
 四句「この城の山に」の「城の山」は、山城が築かれた大宰府近くの山で、大野山とも基山ともいわれる。
 結句「雪は降りつつ」の「つつ」は継続を表し、雪が降り続いているさまを言い止める。前歌の「天より雪の流れ来る」に対し、実際の雪を示して応じる対の構図である。

きのやま:城の山。山城のある大宰府近くの山
作者
大伴百代
出典
万葉集
前の歌
我が園に梅の花散るひさかたの 天より雪の流れ来るかも
次の歌
梅の花散らまく惜しみ我が園の 竹の林に鴬鳴くも